恋だわず
30/30





―どうやら僕は、恋に落ちてしまったようだ…―









===============================================



いやいや、違う
恋じゃない。
あのカラオケ以降、僕は何かと千歳を意識してしまっている


僕がかっこいいと思ったのはあの歌っていた千歳だけであって、このクソ暑い中探しに行かなければらない放浪癖の自由人ではない!



『うあっぁぁぁあぁ!もう嫌だぁっ!』
「ユウ叫んでどぎゃんしたと?」
『うわぁぁっ!千歳!』



頭をわしゃわしゃと掻きむしっていたら茂みからにょこっと千歳が顔を出した
心臓とまる、マジで止まる



『なんでもないわ、ばーか!』
「最近のユウは冷たかね」


ふにゃりと笑った千歳に胸が高鳴ったとか
そんな乙女チックなことしてないし!してないし!!



『白石が探してた!それだけ!』

ぶっきらぼうにそう言うと千歳がクスクスと笑う

『なんよ!』
「いや、顔真っ赤にしてむぞらしかと思って」
『もう千歳なんか知らん!』



千歳を無視して歩き始めれば後ろからでかいのがノソノソと付いてきて
「悪かった」とか「許してっちゃ?」とか可愛い声で言われたのとかもう謙也の従兄弟ばりに心閉ざして聞き流す



「そげん良かったと?」
『はぁ?』



なにやら勝ち誇った声が聞こえたので立ち止まって振り返るとでっかい図体がぼふんと僕の顔にぶつかった



『いたい……』


鼻を擦ろうと右手を上げると千歳に掴まれる
文句の一つでも言おうとして顔を上げると意地悪そうな笑顔をした千歳と目が合った



「俺ん歌、良かっちゃろ?」


普段の千歳なら優しいから話すとき目線合わせてくれるのに
今日の千歳は意地悪だから高い位置から僕を見下ろしてくる



『良くな…』
「嘘はいかんたい」


きっぱりと言われて口ごもる






『……僕がかっこいいって思ったのは、歌ってた千歳だけだもん』
「普段の俺はかっこよくなかと?」
『放浪野郎にそんなこと思うか!』


僕が叫ぶと「酷かー」とさほど傷付いてない様子で声を上げる千歳



「やったら毎日ユウの前でかっこよく居ようと努力すったい」
『は?』
「なんやったら毎日歌っちゃるけん、はよ認めなちゃ」


俺が好きって。
耳元で囁かれて体内の温度が急速に上がる

なんだこれ、暑くて熱くて
段々息出来なくなって…



『ちと…』
「おー。ユウ泣きそうやね、そげん俺んこつ好いとぉと?」



なんか悔しくなって千歳のお腹にヘッドロックした
そんなに痛くなかったし当の本人もけろっとした様子だったけど
一番悔しかったのは千歳がごく自然な動作で僕の背中に手を回したこと


もっと悔しかったのは、千歳の腕の中で完全に身を委ねた自分自身だった







(恋だうぃる)


やっぱり恋に落ちていたようです








     







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -