恋だうぃる
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―そろそろユウに、俺んこつ好きだっちゅーことに気付かせないかんたい―









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久しぶりに部活も休みで
どっかに行くか。と提案したのは他でもなく部長の白石

でもいざとなると何をしようってなって
金ちゃんが「カラオケに行きたい!!」って言ったから満場一致でカラオケになった

乗り気じゃない財前や帰ろうとする千歳を引っ張ってカラオケまでたどり着くと、慣れた素振りで機種を選ぶ白石はこう言った
「DAMやないとテニミュ少ないねん」


果たしてそれが彼等にメリットがあるかどうかは別として、通された大部屋は大きいトトロや大暴れするゴンタクレが居る僕等にはもってこいの広さで、各々が適当に席についた


僕の隣では千歳が歌わない気まんまんで座っている
DVDまで持参してこのカラオケで何をしようとしているのだ

財前と言えば財前で、携帯をぽちぽち弄って
金ちゃんは騒ぎまくるし、謙也は一番に歌うって言って猛スピードで曲探してる

本当、この子達に協調性と言う言葉を教えてあげたい


何を歌うかと思えばノリの良いラップ
マラカスを持つ白石や(ラップのどこにマラカスが居るんだろう?)きっと韻を踏んでいるなんてことに気付かずノリノリな金ちゃん
謙也の歌をガン無視のユウ君に謙也の歌に聞き入る小春ちゃん
銀さんはもくもくと手拍子をしていた(いや、ラップに手拍子いらな…)



「ユウも歌うやろ?」


ニッコリ笑顔の白石は僕に有無を言わせないご様子


『え、僕音痴だから……』
「なんか言うたか?」



機械を押し付けられ溜息をつく
2曲目な訳だし、ここで独りよがりな曲を歌うのはよろしくない

だから皆が盛り上がれるような曲を入れてとりあえずその場の皆のノリでいけるような選曲をした



謙也が歌い終えたかと思うとまたまた笑顔でマイクを渡してくる白石
僕はもう一本を袋から取り出すと金ちゃんに渡した
「ワイも歌うんか?」と言った金ちゃんに『多分歌いたくなるよ』と言うと、なんの曲が流れるのかと必死に画面を見入った金ちゃんに少し笑いが毀れた



『わん、つー、わんつーうー!』
「あー!これワイも知ってるー!」


マイクの電源を入れたまま叫んだ金ちゃんは満足げに僕と歌い始める


「気張ってこーぜっ、いえい!いえい!いえい!」
『振り切ってこーぜ、ホラ』
「「ブンブン」」



一度歌えば全員がノリノリになる
やっぱり、歌うのは少し苦手だけど、こうして楽しいなら少しはカラオケも良いもんだ。と思う



それから白石の完璧な歌声を聴かされ
ようやくエンジンの掛かったユウ君のワンマンショー
声色がそっくりなもんだから皆本物を聴いているかのような錯覚に陥って目を閉じた
(目を開けるとユウ君って現実が見えてしまうからね)


謙也にやんややんや言われて渋々財前も曲を入れて、どこかで聞き覚えのあるような洋楽を流暢な英語で歌われた暁には若干財前に惚れた



『財前、かっこいいな…』
「ホンマですか?そりゃ良かったっすわ」


何気にご満悦のご様子の財前
なんだ、財前だって歌いたかったんじゃん
この調子でこの横で重い頭を肩に乗せてくるトトロも歌ってくれないかと横を見てみたが歌う気配は全くなし、しかも僕に「次はユウ、何歌うんね?」なんて機械いじってる



『一曲くらい歌いなよ。お金勿体無いよ?』
「んー。ユウが俺のリクエスト聞いてくれたら考えるっちゃ」


リクエストねぇ…僕そんなに歌とか知ってる方じゃないし


『なんの曲?』
「ん。」



千歳が機械をこっちに向ける
それは確かに僕も歌える曲なんだけど…なんて言うか…


『馬鹿にしてるでしょ』
「そんなことなか!散歩はユウにぴったりばい!」



隣のトトロでお馴染みの「散歩」
これってあれでしょ、お遊戯会とかで歌うレベルでしょ


『もっと違うアニメとか女性ものだと思ってた…』
「それも良かね、ばってん、今日はこれが聞きたいっちゃ」


僕の返答も聞かずに次の曲に入れてしまう千歳
あー。終わったな、コレ
完璧に財前には馬鹿にされ
ユウ君に冷たい目で見られ
白石と謙也に僕の親かのように応援されるのが目に見えた




「ほれ、歌いんね」


マイクを渡されれば半分やけ
散歩…この曲さえ我慢すれば千歳の歌声が…


『やっぱ嫌ぁっ!ユウ君歌って!』
「は?なんでやねん!」
『物まねは聞いたけどユウ君の生歌聴いてない!』
「いや、せやかてこの曲やなくてもええやん…」


さすがのユウ君も困った様子で小春ちゃんと顔を合わせる


イントロも始まってしまったし、マイクは握ってしまったし
金ちゃんにも歌わせようとしたのにもう一本のマイクが見当たらない



『……あるこー、あーるこー。わたしはーげんきぃー』


ほら、目に見えた光景が室内で繰り広げられた
救われたのはユウ君が困った様子で僕のこと応援してて
銀さんがなにやら温かい眼差しで手拍子してくれて
小春ちゃんは「ユウちゃんかわえぇわぁ」なんて言ってた

あー。財前、動画撮るの辞めてよ
それアップとかしちゃ駄目だからね?



羞恥で死にたくなってきた頃にようやく曲も終わり、ついに千歳が動き始めた


「ユウむぞらしかよ。約束に歌うばい」
『……本当、ありえん!』


あー。もう嫌だ
一生の不覚だよ、これ。この先一生あの後輩に笑われるよ



曲を入れたらしい千歳はどこからか隠していたマイクを取り出した
やっぱ隠してたんお前か!


『え、ちょ。何歌うの?』
「ユウは黙って聴いてれば良か」


千歳のことだからジブリ系の選曲かなぁ?なんて思ってたのに…


―Let's do it! Baby



『え。』
「まぁ」


僕の驚いた声と小春ちゃんの目がハートになるのはほぼ同時だった



―たまげるほどに晴レルヤ
太陽がきらめいて Feeling good!
I'm in love with you
それだけでもうハイテンション



あまりのギャップにユウ君も「浮気か!」と突っ込むことなく呆気に取られている(そんな稀な表情を財前は写真に収めていた)


―Let's do it! Baby さぁ ふたリで
Supernova探しに行かんね
Let's do it! Baby さぁ ふたリで
Brand-New World Tourに出かけんね
有頂天なSmile 瞬くFlash
空回リは溺愛のワナ スリルはどぎゃんね?
イタイケな Days イタズラにCrazy
Oh! What a love! 願いは
お前とNow & Forever



歌い終わった後は皆ぽかーんで
白石とか笑顔で固まってるし
珍しく金ちゃんも目を真ん丸くさせてた



「久しぶりに歌うのは良かね。ん?ユウどぎゃんした?顔が赤とよ」
『な、なんでもないっ!!』



覗き込んできた千歳の顔をむぎゅーと両手で追いやれば「酷かぁ」と呟いた



歌ってた千歳がかっこよかった
純粋にそれだけ
歌声が普段と違っておっとりした感じじゃなくて、かっこよくて





千歳に惚れそうだとか、別に思ってないんだからな!





(恋だうぃる)




きっとそれは
恋の予感―








     







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