風紀委員
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『はいストップー。キリッとストップー』
「何某歌い手みたいなこと言ってんすか先輩。きもいっすわ」
『なんで僕のが傷付いてんだろう…』




風紀委員



朝の登校時間
校門で目を光らせている僕は太陽の光を反射する耳のソレを見落とすわけにはいかなかった


『財前君、ピアス駄目って言ったよね?』
「だったら他の人はどうなんスか?緑髪に金髪。包帯に赤髪ハゲにホモに…」
『全部お前ん所の部員やないかいっ!』


びしっと財前訓に突っ込みを入れる
あ、うざそうな顔した。すっごいうざそうな顔した


『てか!ホモを取り締まれなんて校則ないし!』
「だったら先輩はホモ好きなんすか?」
『何故そうなった財前』
「俺髪色は大人しいんですけど?」


そうそう、だからそのピアスが余計に目立って見えるんだよ
って言うか、先生達もテニス部がうちの学校で強いからって甘やかし過ぎだと思うんだよね



「ちゅー訳で俺忙しいんで」
『待てこら。僕も忙しいんじゃボケ』
「関西弁の僕っ子ってなんかきもいっすわ」


おま、先輩になんちゅー態度…
あー。泣きそうになってきた。そろそろ泣けるわ


「はぁ…ほな今日放課後に指導受けるんで待っててください」
『なんで僕が誘われてんの?僕が君を指導に誘うんだよね!?』
「うっさいな。ホンマ」
『僕先輩やぞ!』
「はいはい」


ひらひらと手を振りながら歩いていく財前君
覚えてろ。今日の昼に自販機の善哉全部買い占めてやるからなっ!






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なんだかんだ言いながらもちゃんと指導室に来た財前君


『はい。僕にピアス全部渡して』
「ああ。その前にちょっといいですか?」


立ち上がった財前君は僕の目の前に立ちはだかる
並々ならぬオーラに一瞬身を固めた


『な…』
「俺の目見て下さい」


顔を固定されて無理矢理視線を合わせられる



「目瞑って」
『はぁ?』
「ええから」


低い声でそう言われて渋々目を閉じる
なんで、こんな至近距離で目瞑らなきゃ…

良からぬ想像が膨らみ鼓動が早まる

まさか、
まさかね…


財前君が近寄ってくる気配を感じ一層体を強張らせた時


ガッシャン!



大きな音が響いた
否、僕の耳に反響した
刹那襲う痛み


『いったぁっ!』
「ん。上出来」


何が起こったか分からず暫く変な動きを繰り返していると財前君が声を上げて笑った


「先輩おもろいっすわ」
『何した財前!』


耳の痛みに涙が出る
財前君が鏡を持ってきて耳を指差すから恐る恐る中を覗くと僕の真っ赤になった耳には小さなピアスが付いていた



『はわわわ…なんてこと…』
「消毒してなかったんすけど大丈夫だと思いますわ」
『はぁ!?』


色々駄目だ
色々突っ込むことが多すぎる



『僕風紀委員!』
「そうでしたね。」


風紀委員の耳に光るピアスなんて…
そんな説得力の欠ける風紀委員なんて…



「先輩、ちゃんとお風呂上がったら消毒してくださいね?後暫くは外さんどいて下さい」

『すぐ外すわ!この穴すぐ埋めるから!』


財前君が僕を見下すようにして見つめる
拳を握って前に突き出すもんだから何かと首を捻っていると「ん」と小さく言われたので両手を広げた



「このピアス、先輩に上げます。俺と同じの付けたかったらちゃんとピアスホール大事にしてくださいね」



唖然とする僕を置いて財前君は扉に手を掛けて出て行こうとした
出て行く寸前、一度振り返って





「俺、好きでもない奴に自分とお揃いのもんあげない主義なんで。意味よう考えてくださいね」




パタン―と閉まった扉だけが室内に響いた




『そんな……』



右手に握られたピアスを見つめて溜息をついた







数ヵ月後
僕の耳に財前君と同じピアスが光ってたことは
言うまでもない事実なのでありました






おわり



     







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