木陰のバトル
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「やーはたーを選ぶぬやっさー」
「俺じゃろ?」
「俺ばい」

『あわわわ、落ち着いて!』


とんでもない3人が揃った
In合同合宿


跡部の協力により青学、氷帝、立海、四天、比嘉と言う5校が揃ったこの合宿
青学の緊急マネージャー桜乃ちゃんと共にひーひー良いながら仕事をこなしている時だった



「ユウタオル欲しいぜよ」


仁王が疲れた顔で僕に寄りかかってきた


『はい、どーぞ』


だいぶハードな練習なのは見て分かる
それに加えこの暑さ
仁王には限界なんだろう
涼しい場所を求めて放浪しそうになるのを何度も止められていた


「まー君溶けちゃうなり」
『うん、本当』


仁王の白さはまるでバニラのアイスクリームの様
このまま太陽の下に居たら溶けてしまいそうだった


「ユウ助けてー」


ぐでーんと僕の肩に両手を置いて完全に体重をこっちに寄越す仁王に足元がふらつく

そのままリュックサック方式でその辺の日陰求めて仁王を引きずって行った



『ちゃんとご飯食べてる?』


ひ弱ではないが運動部ではない僕が運べる軽さだ
心配になる


「好きなもんは食べてるぜよ」
『焼肉とか?』
「んー…おむらいすとか…」
『可愛いな、オイ』


溶けかけ仁王君はゆるーい答えを返してくる


ちょうど良い日陰を見つけて仁王をそこに置くと満足した様子で座り込んだ



しかし


「なんね仁王君、ここは俺のおった場所ばい」


右手にスポーツドリンクを持った千歳君がふらふらと歩み寄ってきた

「関係なか、ユウが連れてきてくれた所じゃけぇ俺は譲らんよ」


むっとした仁王は僕をぬいぐるみかのように抱き寄せて千歳君に反論する
座ってる僕達に対して千歳君は立っている
元々背の高い千歳君から見下ろされる形で僕等は対面していた



「あー!先客が居るさ〜」


向こうの方で残念そうな声を上げるのは金髪の平古場君

とんでもないことになった
この3人の方言は9割方何を言ってるか分からない
平古場君に関しては10割何を言ってるか分からない



『もう皆標準語喋ってよ…』


半分こっちが泣きたくなる程
この中で生活していたらきっと僕の標準語も少しずつおかしなアクセントになっていく気がする




「またうるさいのが増えたぜよ…」


仁王が嫌そうな顔して僕の首筋に顔を埋める
仁王がこれをする時はあれだ
すっごい眠い時だ



「うるさいってなんね」
「やー暑苦さんよ」


口々に文句を言う2人


「悔しかったらユウをぎゅぅっとしてみんしゃい」


この一言がいけなかった
むっとした千歳君と平古場君


「上等!」


平古場君が言うと同時に二人が覆い被さる


『うぐっ!重い!暑い!死んじゃう!』


三人の重みでもたれていた木がミシっと音を立てる
右には仁王
左には千歳君
前には平古場君

なんですか
誰得なんですか



「千歳もうちょい向こう行きんしゃい」
「平古場が場所っとるんばい」
「仁王が邪魔ぬーがってから」


僕の周りは3Dスピーカーのようにギャーギャーうるさい
暑いんだったらもう少し静かにしてればいいのに…
さっきまで涼しかったはずの木陰は一気に熱くなっていた



「なんやなんやぁ!?わいも混ぜてぇやっ!」


通りすがった金ちゃんは僕達を見て遊んでると勘違いしたのかきゃんきゃん声を上げて近寄ってくる



「っち、めんどい奴が来たぜよ」
「本当ばい」
「あんまさい(めんどくさい)」



三方向から聞こえる絶賛批判

聞こえない金ちゃんはずんずんと近寄ってくる
が、しかし


「金ちゃん、さっき白石が呼んどったばい」
「えー!千歳だけずるいやんかぁ!」
「毒手…」
「うあぁぁぁぁあぁあっ!行って来る!」


千歳君が一言言うと慌てた金ちゃんは踵を返して走り去っていく
ああ、もしかしたら助けてもらえたかもしれないのに…

そうはさせない三人
なかなか策士である



金ちゃんの姿が完全に消えた時
三人は言った

ここで冒頭に戻る

「やーはたーを選ぶぬやっさー」
「俺じゃろ?」
「俺ばい」

『あわわわ、落ち着いて!』


方言率100%で
何を言ってるか分からないとは言うものの
お三方は皆整った顔をしている
故にそんな美形でずいっと近寄られたら悲鳴も上げたくなるものだ


誰を選ぶって言ったって
もんもんと悩んでいると木漏れ日が柔らかい影を落としていた木陰に大きな影が出来た





「…仁王君、次私達の番なのですが?」
「千歳、何してるんや?」
「平古場君、貴方今日こそはゴーヤ食わしますよ」



暑くて熱かったはずのこの場所
一気に体感温度が下がった



「はぁ…行って来るぜよ」
「俺はまだ試合なかやろ?」
「ゴーヤだけは勘弁」


渋々立ち上がった三人
冷気を放つ三人は一斉に溜息をついた



「やーぎゅ。次の試合は誰となんじゃ?」
「……平古場君です」
「ほぅ…」


仁王が平古場君を上から下まで見る


「ぶちのめさんとアカンようじゃのぅ」
「上等」

「千歳にしては大人数で居るなんて珍しいやん?」
「……白石。後で仁王と平古場と試合させて欲しいたい」



三者睨み合う木の下




「勝者にはもちろん…」
「ユウじゃろ?」
「当たり前さー」




ゴゴゴゴゴと音でも付きそうなその空間に
冷静な三人の溜め息が響いた




(((ユウは)))
(俺のもんじゃ)(俺のもんたい)(わーのもんや)



(……財前、僕は君が好きだよ)
(先輩、嬉しいっすわ)




おわり



     







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