シリアスとシリアルを読み間違えた
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(シリアス)






「仁王君、お願いですから元に戻ってくださいっ」




柳生が苦しそうにそう叫んだ



「嫌じゃ…」


俺も負けじとそう叫んだ

体を揺さぶる柳生がうっとおしい
イリュージョンなんて毎日やってることじゃろ…

それを今日に限っては剣幕な顔で「やめろ」と俺に言ってきた


俺の家
勝手に柳生が上がりこんで来たかと思ったら開口一発目にして俺を否定しよった

不法侵入に陰口罪じゃな…
逮捕状請求じゃ


柳生が必死なのも全て他人事
いまさらイリュージョンをやめるわけないし
別に誰にも迷惑掛かっとらんじゃろ?


それなのに柳生は否定した


「色んな意味で早く仁王君に戻ってください」
「嫌じゃ」


俺は自分に戻ることを拒否した
仁王雅治でいることに疲れた
他人で居る方が楽だった


「それじゃ学校に来てください」
「もっと嫌じゃ」


仁王君の我が侭
登校拒否の男の子には優しく出来んのかのぅ…


「今日の柳生、なんか変ぜよ」
「貴方のせいでしょうっ!」


普段そんな大声あげんのに


「ユウ君も心配しますよっ!」
「ええもん、心配させとけば」


それが目的じゃもん
なのになんで柳生が来るんじゃ

俺が心配して欲しいのは柳生じゃない
ユウにして欲しいんじゃ



「幸村君も真田君も、皆心配しています」


違うんじゃって
俺はユウだけに心配して欲しいんじゃ
他の奴等が心配してくれても
ユウが心配してくれな意味がない



「辛いのは皆同じじゃないですか…」



柳生の声が小さくなった


やめんしゃい
さっきみたいに大声で怒鳴られてた方が楽じゃ


「仁王君…」



そんな弱々しい声で



「お願いですから」




そんな哀色に満ちた瞳で
俺を責めるんじゃなか…


「ユウ君から仁王君に戻ってください!」

「絶対嫌じゃっ!」




仁王になんか絶対戻らん
戻ったら俺は悲しさと寂しさで押しつぶされそうになる
そんなの耐えれん
俺はユウ無しじゃ生きて行けんのじゃ



「私も辛いんです…っ、なのに目の前にはユウ君が居る…」


俺と言う人間を殺して
俺がユウになってしまえば
誰も悲しまない
皆喜ぶ


「貴方のイリュージョンが完璧なまでに…」


違う
イリュージョンでもペテンでもない



「でも私は仁王君が居なくなるのも悲しいんですっ!」


柳生が叫んで俺の胸倉を掴んだ
ベットの上に押し付けられて息を呑む




「ユウ君の顔で…私を責めないでください…」



皆皆
責任を感じてた
俺だけじゃなかった




「やぎゅっ…」
「仁王くん…っ」




もう戻って来ない
俺がユウになっても
ユウはいつまで経っても帰ってこない









俺はユウと言う人間を手放した―…





fin



     







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