カウントダウン
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怖い…
怖すぎるだろっ!


目の前に迫る美形に困惑する俺
何があったんだっけ?
あれ?なんでこうなったんだっけ?


そもそもの理由を思い出すべく頭をフル回転させる


この、学校一のイケメンと言っても過言ではないテニス部部長、幸村精市
蒼く漆黒がかった髪色に映えるような白く透き通った肌
無論、女が放っておく訳がない

故に他の男はあまり近付きたくなく、
女子と関わりを持ちたいと下心丸出しで関わった男子生徒は
尽く、テニス部に近寄る為の道具として利用され

結果、男子がテニス部を利用したのか
女子が男子を利用したのか分からなくなっている


そんな訳だから俺も出来れば平穏な生活が送りたく
普通に暮らしていたのだが
今年の席替えで仁王と丸井と同じクラスになってしまったのが運命の尽きなのだろうか
無駄に話しかけてくる丸井にうんざりしていた最中の幸村君からの呼び出し

今まで話したことなんかないのに何故か幸村君は俺の名前を知っていた
綺麗な声で教室中に俺の名前を響かせると周りが一斉に静かになったのは記憶に新しい


さて、そんな彼が俺を屋上に連れ出し、開口一番に言った言葉は…


「ユウをあの子から奪ってみようと思うんだ」


意味の分からない一言だった


『はぃ?少し仰ってる意味が…』
「そう?じゃあ…」


そうして冒頭に戻る
背後ではフェンスが俺の背中のラインに沿って歪んでいく
前にはじりじりと綺麗な顔
左右のフェンスに幸村君の手が静かに置かれた瞬間、俺は叫んだ


『あ、あわわ!ちょ、分かりましたっ!分かりましたから!!』

「そ?なら良かった」

ニコリと笑って俺から体を離す幸村君
何を言うかと思えばとんでもないことを言われた


『え…あの、俺を……?』

「そう、あの子から奪ってあげようと思って」



あの子…
そう、俺に最近出来た彼女の話
可愛くてふわふわしていて
俺にはもったいないくらいの子なんだが
先日告白してもらい、俺も笑顔で頷いた


「俺さ、人のものって奪いたくなるんだよね」
『はい?』


顎に手を当てながらフェンスに寄りかかった幸村君は綺麗な顔でまたもやとんでもないことを言った


「ほら、友達とレストラン行って、違うもの頼んだとしたら、他人の方が美味しそうに見えない?」

『…隣の芝生は―ってやつですよね…?』

「そう!それと一緒だよ」


ちげぇだろっ!
内心突っ込みながら幸村君の言い分を聞く


『いや、でも俺男ですし…』
「うん、なにか問題でも?」


…世界は貴方中心に回ってるんじゃないんですよ…幸村君…


「とにかく、必ず奪ってみせるから」



よろしくね?
そう言って右手を差し出された



『…はぁ…』


握り返すと頭をポンっとされた
そして幸村君は屋上から出て行った




中学3年間
平穏な生活を送ってきた九条ユウ
3年目の始まりにして
春が来て
そして、嵐が来る予感がします…





つづく

(お題配布元:確かに恋だった様)



     







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