別れの日までさようなら
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(高校生設定)









早く、
早く行かねぇとあの人達は行ってしまうんだ


そう思うと廊下を走るスピードも速くなった
たぶん今まで真田副部長から逃げてたあの日よりも格段と速い
階段を駆け下りて3年生のクラスへ行く

写真撮影や寄せ書きをする人でごった返す廊下をなんとか潜り抜けて目当ての教室に入り込んだ



「はぁ…はぁっ…」

「遅いぞ、赤也」


真田副部長がいつもみたいに俺を怒る
幸村部長がそれを笑顔で見てる
柳先輩は何分遅れたかを正確に伝えた


「在校生はあの後色々あるんスよ…っ!」


真田先輩にそう言うと「まぁ、いい」と返って来た
いつもなら言い訳するな。と鉄拳が飛んでくるのに
あっさりしたその答えにやっぱり胸が痛んだ


俺は視線を三強から移してキョロキョロと教室内を見渡す
テニス部以外にも人は残っていて探すのは大変かと思ったがその人は窓辺に居た




「ユウ、先輩…」


歩み寄って名前を呼ぶと仁王先輩と話すのを辞めて笑顔で振り返った


『あ、赤也おはよーっ』


いつもと変わらない挨拶
アンタ、明日から居ないんだろ?

胸ポケットに刺さってるカーネーションを見て思った

なんでそんな普通なんだよ
明日から俺はこの学校でアンタを探すことは無くなるんだ


『どったの?赤也?』


無言で俯いてた俺にユウ先輩は覗き込んで聞く
隣の仁王先輩がケラケラ笑っててうざい



「卒業、しちゃうんスか…?」


ようやく出た言葉にユウ先輩は一瞬目を丸くした


『そうみたいね。まだ実感ないけど』


ふにゃりと笑った先輩はさっきの式中に「卒業生、起立」で立てなかったんだよー。とどうでも良い話をした

違う、俺が聞きたいのはそんなんじゃなくて




丸井先輩が後ろで五月蝿い
これじゃユウ先輩の声が聞こえない



『赤也、僕と居て楽しかった?』


不安げに聞いたユウ先輩

仁王先輩が席を立って丸井先輩を黙らせに行った
良い所あんじゃん、先輩


「当たり前ッス」
『そ、なら良かった』


幸村先輩が笑う時みたいに美しく笑う先輩


「俺、その…そつぎょ―…」
『赤也』


俺の声を遮ってユウ先輩は俺を抱きしめた
中学の頃は俺の方が身長上だったのに
肩に来たユウ先輩の髪の毛が俺の首をこしょぐる

胸がぎゅってなるような
泣きそうな感覚
全身に回って
麻痺したみたいに動けなくなる
切ない。って
こういうことなのだろう


『大好きだよ。赤也』


その言葉に声が出なくて
一生懸命頭を振って背中にしがみついた



『僕等居なくても、テニス部は大丈夫だよね?』


そうだ。
中学の時も同じだった
先輩達が中学卒業して
俺一人残されたあの日
虚無感に包まれて
広いテニスコートで俺は誰とも関わりを持たなくなった


「後1年…我慢すれば良いッスよね…?」

後1年
そうすればまた同じ大学で逢えますよね?



『赤也頭悪いから大学来れるかなぁ…?』

「死んでも行ってみせます」
『死んだら来なくて良いよ』



ユウ先輩が俺を離した
それが合図だったかのように気付けば教室には先輩達しか居なくて
一列に並んだ先輩達
幸村先輩が綺麗に微笑んだ



「赤也、」



―テニス部を頼むよ―



「はい…っ」




(別れの日までさようなら)

(この涙よ)
(次の別れまで)
(さようなら)






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ユウが昨日卒業式だったので書いた作品←
とんでもなく日常と変わらなかった昨日にびっくり
きっと立海大附属と言うくらいなの大学まで一緒かなぁ?と

まぁ、誰か一人くらいはテニスで違う所行きそうですが…
とにかく

全国の高校生の皆さん
卒業おめでとう


2012.03.02



     







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