僕を見つけた?
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目の前に
会いたくない人(×2)が居たら
人はどうするだろうか?

もちろん逃げるだろう
全力で


しかし
会いたくない人が前に居るとも知らず
ほんの3歩前で気付いてしまったら
人はどうすることができるだろう?




『あ、あははは…』

乾いた笑い

銀髪詐欺師と濃紫の紳士

先日片一方の紳士に愛を告げられた

その上で詐欺師とのイリュージョンを見破れと無理難題を押し付けた


そんなこと出来ないのでここ数日間避けていたのに
バチと言うのは本当に当たるらしい

しかも2倍となんとも痛い


「ユウ、顔色悪いぜよ」
「そうですね、どうされたんですか?」


もはや人間不信
どっちなんだ
どっちが柳生でどっちが仁王なんだ

もはや外見と言う入れ物だけでは信じられない
内面の、中身を見極めなければ、紳士の言う勝負には勝てない



『…あう…て、てか二人揃ってどうしたの?』


クラスも違うし滅多に二人で歩かないので不思議に思い問う



「次の試合のこと話とったんじゃ」
「えぇ。次は青学の黄金ペアとも呼ばれる大石・菊丸ペアですからね」

『そうなんだ…』



曖昧な返事に二人は不思議そうな顔をした


『あ!僕も応援行っていいかな?』

「もちろんじゃ。ちゅーか誘う気やったし」


「のぅ?」と仁王が柳生に聞くと柳生は笑顔で頷いた


『じゃ、僕行くね?』


その場をそそくさと逃げる



次の試合までに
どうやってでも柳生と仁王の違いを見分けないと…



ずんずんと進む廊下で
一人そんなことを考えながらため息をついた―




====================


大会当日―

結局分からないまま
試合の日になってしまった


柳生達の試合が始まる前に
差し入れを持ってレギュラー陣の所へ駆け寄った


『あのー…』

「なんだ?」
『ひぃっ!』


同学年でも怖いと思う副部長の真田君


『あ、えっとですね…差し入れの方を…』

「差し入れ?」


うっわ、めっちゃ怖い!
もう泣くかもしれん

え、普通応援とか差し入れって素直に「ありがとう」で終わるもんじゃないの?
なんでこんな殴られそうになってんの!?


「真田?怖いんだけど」

「幸村!」
「ユウ君泣きそうになってるじゃないか。」


「ごめんね。」と優しく微笑み掛ける幸村君


「す、すまない…」

幸村君に咎められて真田君が謝る


『大丈夫ですよ。あ、それよりこれ、差し入れです』

「ありがとう。柳生なら向こうに居るから」



そう幸村君が指差す方には銀髪と濃紫


『ありがとうございます。』




頭を下げて二人の下へ駆け寄った


もう中身とか
見分けるとか知らない


仁王と柳生の違いなんて
僕には関係ない

仁王は仁王
柳生は柳生


見分けるも見分けないも

最初から二人は違う人間


たとえ二人が双子だったとしても
「見分ける」だなんて言葉不謹慎だ



だから僕は



『応援に来たよ。詐欺師中の紳士さん。』


ストレッチをする銀髪に話しかけた



「…ユウ君」


濃紫は「ククク」と笑った


「ユウ、試合前じゃけぇ種明かしは禁物ぜよ」


驚きを隠せないのか銀髪紳士は固まっている



「ようやく分かったんですね」



柔らかく微笑んだ仁王中の柳生

仁王の顔で微笑んだけれど僕にはうっすら柳生の顔が見えた




『わかんないよ、だけど仁王は仁王。柳生は柳生
見分けるとか見分けないとか関係ない
二人は別人なんだから。』


別人を見分けるなんておかしな話でしょ?と笑うと柳生は


「そうですね」


屈託のない笑顔を返した



「さて、仁王君。そろそろ行きましょうか」

濃紫が眼鏡を直しながら言った

「了解ナリ」



銀髪紳士は立ち上がって僕の頭を撫でた



「待っててください。勝ちますから」




入れ替わった二人がコートに立った


誰も知らないイリュージョン
僕だけ知ってる種明かしに



試合中笑顔が消えなかった―




(ようやく見つけた)
(柳生の本心)
(早く試合よ終われと)
(心底願った)



     







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