”会合”が始まるのは夜中で、終わるのは大抵深夜か明け方だった。
なので伏見は毎回椛に送り迎えを申し出た。椛は殆どそれに甘えたが、家を教えることは未だ拒んでいたので必ずどこかで待ち合わせをして、帰るときはそこで別れた。


その日は珍しく朝に会合を始め昼に終わり、仕事の都合で来られなかった伏見の代わりに明智が椛を送ることを申し出た。昼なのだからその必要もない気もしたが、椛がすぐに「お願いします」と返したので誰も異を唱えることなく解散した。

帰りの途中、公園で明智が椛と話がしたいと言い、二人はベンチに並んで座った。風は弱く、時折椛の長い髪を揺らした。


「伏見さんとは何処で知り合ったの?」
「此処よ」
「ここ?」


驚いて間抜けな声を出した明智の方を見て笑い、椛はすっと腕を伸ばして舗道がある、紅葉の林の向こうを指さした。


「何度もあそこで目が合って、会釈を返してたの。でもいつまで経ってもお声を掛けて下さらないから、私から挨拶したわ」
「そのときから伏見さんのことが気になってたの?」



椛は舗道を指していた指を一度下ろし、ゆっくりと唇の前に立てた。「秘密よ」
いつもの受け答えに明智は笑い、さして気に留めはしなかった。むしろその答え以外が返されるとは思っていなかった。


「伏見さんとは恋人じゃあないんでしょう?」
「ええ。違うわ」


椛は微笑んで明智と顔を見合わせた。手は左手を上にして重ね膝の上に置き、足を揃えて座っている。ある程度教養のある女性なら皆そうするだろうその姿勢でさえ、彼女がすると特別優雅なものに見えた。

明智は明智で、すらりとした肢体を優雅に見せる術を上手く身につけてたので、椛と並ぶのに四人の中で一番違和感が無かった。


「それがいい。伏見さんには貴女みたいな女性は似合わない」


明智は慣れた仕草で椛の手を取り、椛も別段驚いた風もなくされるがままになっていた。


「伏見さんにはもっと家庭的な人が似合うよ。君みたいな不思議な女性は―――」


明智が自分の口元に椛の手を持って行くと、椛は突然「だめよ」と手を離した。手は簡単に明智からすり抜けていったが、椛はその場から動こうとはしなかったし、気分を害した様子もなく微笑んでいた。


「私、すべてが終わるまで誰ともそういう関係になる気はないの」
「どうして?」
「明智さま、私ね、どうしてもやらなければいけないことがあるの」


椛は笑って、立ち上がるともう話すことはないとでも言うように挨拶もせず去っていった。


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