白夜叉バレボツネームA | ナノ

 6

2週間程ずっとベッドで寝てたせいか、すっごい体力が落ちた気がする。
屯所までの道のりが辛い。


息からがら、ようやく屯所の前に到着した時。
まるで待っていたかのようにジミーくんがそこにいた。



「え、旦那!?
そんな息切れしてて大丈夫なんですか!?」

「だ…だぃ、じょぶ…………
それよ、り……ひ、じかた、は…?」


「土方さんなら自室にいますよ?」



そういってジミーくんは俺を屯所へ入れてくれた。







土方の部屋へ向かう途中で息を整えて、部屋の前へ着いた時には決心して戸を開けた。









ガラッ―――……




「…なんだまた山崎か?
一々口うるせーんだよ。テメーは俺のかーちゃんかっつーの」


こちらに背を向けて何やら作業している土方。
その背中を後ろから抱きしめる。



「―――――な」

「お願い。振り向かないで聞いて」

「え、ちょ。え…?
……おまえ、ぎん、とき?」



土方がこっちを見ようと動こうとするが、それを腕に力を込めて制止する。


「お願いだから、黙って聞いて…」


土方は動きを止めると、聞く姿勢に入ってくれたようだ。


「ありがと…」








泣かないつもりだったのに。

土方の香りが、体温が。
俺の決心を鈍らせてくる。





だけど。

土方は俺が憎い―――…だから、俺は。











「…………………………………
……………………………………

……………………………………

………ごめん……………





土方ごめん………

本当に、ごめ、なさい……

謝、て…済、むこと、じゃない、のは、わかって、るけど……………





おれの、せい………おれのせい、で、真選組、辞める事にな、てるなんておれ、知らなかった……

本当にごめん……





俺、土方の為、に、死んでやる事、出来なかった…

夢、の中で、怒られた、から…

俺に、気づかせ、てくれた人、がいるから………



だか、ら、ごめん、なさい…………
おれは、生き、るよ……

ひ、じかた、の前、に、姿を現さ、ないようにするから………



ごめ、ん……………

おれなんか、が、生きて、て…


ごめん、なさい……………」











もう、土方と逢わない。

土方に嫌な顔されたくない、見たくない。
これは全部、俺のわがままだ。

暫くは辛いけど、でも、俺には新八と神楽がいる。
二人が俺のそばにいるって言ってくれたから、それだけで満足なんだ。


それ以上は望まない。





















顔を見てしまうと気持ちが溢れだしそうそうで。
土方の顔を見るのが怖くて。

だから素早く、此処から去ろうと思って目を合わせずに離れる。








「待て」

「! ヤッ!!」





土方の制止の声が、

言われるであろう拒絶の言葉が、

ぶつけられる怒りや憎しみの感情が、



―――――――――――怖い。






制止の声も聞かず、なんとか土方を振り切って逃げようとするが。



「お前の話しはもう終わりだな?

それなら、俺の話しも聞けよ」


相手は武装警察で。
日頃から訓練を怠らない鬼の副長さん。

かたや俺は何でも屋を営むプータロー。
しかも2週間程入院してたせいか体力や筋肉が衰えてる。


そんなの、勝負するまでもない。
俺は土方に簡単に捕まってしまった。




「やめろ!離せよ!」

「嫌だね。離したらお前逃げるだろ」

「当たり前だろ!俺の話しは終わったんだ!!」

「まだ終わっちゃいねェ。
俺の話しも聞いていけよ」

「嫌だ!!聞きたくない!」



力の差は歴然でも、俺は抵抗するしかない。
だけど土方は、赤子の手を捻るかのように簡単に俺を拘束する。

土方は俺を抱きしめるように両腕を後ろに纏め、それでも顔は見せないように土方の肩に頭をのせている。




「お願いだから、離―――――」
「――――すまなかった」





(………え?)


土方の言葉に驚いて、思わず動きを止める。
まさかと思って土方の顔を見ようとするが、土方も顔を俺の肩に乗せていることもあって見えない。





「…すまなかった、銀時………」

「え…なん、で………
なんで、土方が謝るの?
だって土方は悪くないよ?
悪いのは俺であっ―――」
「―――ちげェ………
違うんだ銀時。

悪いのは俺だ…俺が悪いんだ」

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