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2週間程ずっとベッドで寝てたせいか、すっごい体力が落ちた気がする。
屯所までの道のりが辛い。
息からがら、ようやく屯所の前に到着した時。
まるで待っていたかのようにジミーくんがそこにいた。
「え、旦那!?
そんな息切れしてて大丈夫なんですか!?」
「だ…だぃ、じょぶ…………
それよ、り……ひ、じかた、は…?」
「土方さんなら自室にいますよ?」
そういってジミーくんは俺を屯所へ入れてくれた。
土方の部屋へ向かう途中で息を整えて、部屋の前へ着いた時には決心して戸を開けた。
ガラッ―――……
「…なんだまた山崎か?
一々口うるせーんだよ。テメーは俺のかーちゃんかっつーの」
こちらに背を向けて何やら作業している土方。
その背中を後ろから抱きしめる。
「―――――な」
「お願い。振り向かないで聞いて」
「え、ちょ。え…?
……おまえ、ぎん、とき?」
土方がこっちを見ようと動こうとするが、それを腕に力を込めて制止する。
「お願いだから、黙って聞いて…」
土方は動きを止めると、聞く姿勢に入ってくれたようだ。
「ありがと…」
泣かないつもりだったのに。
土方の香りが、体温が。
俺の決心を鈍らせてくる。
だけど。
土方は俺が憎い―――…だから、俺は。
「…………………………………
……………………………………
……………………………………
………ごめん……………
土方ごめん………
本当に、ごめ、なさい……
謝、て…済、むこと、じゃない、のは、わかって、るけど……………
おれの、せい………おれのせい、で、真選組、辞める事にな、てるなんておれ、知らなかった……
本当にごめん……
俺、土方の為、に、死んでやる事、出来なかった…
夢、の中で、怒られた、から…
俺に、気づかせ、てくれた人、がいるから………
だか、ら、ごめん、なさい…………
おれは、生き、るよ……
ひ、じかた、の前、に、姿を現さ、ないようにするから………
ごめ、ん……………
おれなんか、が、生きて、て…
ごめん、なさい……………」
もう、土方と逢わない。
土方に嫌な顔されたくない、見たくない。
これは全部、俺のわがままだ。
暫くは辛いけど、でも、俺には新八と神楽がいる。
二人が俺のそばにいるって言ってくれたから、それだけで満足なんだ。
それ以上は望まない。
顔を見てしまうと気持ちが溢れだしそうそうで。
土方の顔を見るのが怖くて。
だから素早く、此処から去ろうと思って目を合わせずに離れる。
「待て」
「! ヤッ!!」
土方の制止の声が、
言われるであろう拒絶の言葉が、
ぶつけられる怒りや憎しみの感情が、
―――――――――――怖い。
制止の声も聞かず、なんとか土方を振り切って逃げようとするが。
「お前の話しはもう終わりだな?
それなら、俺の話しも聞けよ」
相手は武装警察で。
日頃から訓練を怠らない鬼の副長さん。
かたや俺は何でも屋を営むプータロー。
しかも2週間程入院してたせいか体力や筋肉が衰えてる。
そんなの、勝負するまでもない。
俺は土方に簡単に捕まってしまった。
「やめろ!離せよ!」
「嫌だね。離したらお前逃げるだろ」
「当たり前だろ!俺の話しは終わったんだ!!」
「まだ終わっちゃいねェ。
俺の話しも聞いていけよ」
「嫌だ!!聞きたくない!」
力の差は歴然でも、俺は抵抗するしかない。
だけど土方は、赤子の手を捻るかのように簡単に俺を拘束する。
土方は俺を抱きしめるように両腕を後ろに纏め、それでも顔は見せないように土方の肩に頭をのせている。
「お願いだから、離―――――」
「――――すまなかった」
(………え?)
土方の言葉に驚いて、思わず動きを止める。
まさかと思って土方の顔を見ようとするが、土方も顔を俺の肩に乗せていることもあって見えない。
「…すまなかった、銀時………」
「え…なん、で………
なんで、土方が謝るの?
だって土方は悪くないよ?
悪いのは俺であっ―――」
「―――ちげェ………
違うんだ銀時。
悪いのは俺だ…俺が悪いんだ」