帰りたい
その頃。小学校五年から中学二年まで部屋で寝ていると地震によって起こされていた。朝親の手で、ではなく深夜の一時に地震によって、だ。勿論ビックリして飛び起きて部屋の外へ逃げ出す。部屋の外へ飛び出すと揺れがピタリと止み「地震が治まった」と安堵して部屋へ。そうしたら地震が起きている。
しかしそこで俺は気が付いた。
部屋に置いてあるペットボトルは一切揺れていないのだ。
だから俺はリビングへ移動したり、次の日ヅラや高杉に地震について尋ねてみるとそんな事実はなく。
いつものように深夜一時を回れば起きる地震。
何度も体験すれば慣れてくるもんで、俺は何もビビりはしなかった。只布団の中で治まるのを待ち続けた。だがその日は違った。慣れてビックリもへったくれもない俺に業を煮やしたのだろうか、突然横からけたたましい爆音に驚く。
――ガシャーン!!
大きな金属音が落下する物音。それと重ねて「バキ!グシャ!ビチャ」という何かが潰れたり破裂する音。その中に紛れて人の悲鳴を聞いた気がする。確証がないのは破裂音の方が大きいから。かき消されて合間に聞いただけなので自信はない。
これが二年の終わり頃まで続いたが、俺は思った。
「きっと震災で亡くなった人の魂がここにたどり着いて迷っているのかも知れない」(気付くのおせぇけどな)
この部屋にはそういう通り道があるんじゃないか、と。とりあえずリビングに置いてあったバナナ一房と塩を用意し誰もいない自分の部屋に、独り言のように話しかけてみた。
「海は向こうだから、あっちに進めば故郷に帰れると思うよ。あと長旅だと思うからさ、腹減ったらバナナ食えよ。バナナって腹持ち良いんだぜ」
重ねてうろ覚えだがお経を唱えてみた。
幽霊だろうが生きている人間だろうが、故郷に帰れないのはとても辛いと思ったから。その日から本当に地震は起きなくなった。
なんとなくだが次の日お供えしたバナナは寺に持って行ってみた。幼いながらにお供えする場所は分かっているから、そこにバナナを置いて手を重ねてみた。
バナナは一日で真っ黒になってしまったが、それから地震は起きていない。
桂「これは怖いというより少し切ないな」
銀「すげぇな妖夢さんって。俺怖くて無理だわ」
高「怖いのは分かるが、朝起きたら股間で顔埋めて寝てる図が出来上がってるパターンはもう止めてくれ」
坂「銀時・・・」
銀「ここで言うううううう!?」