洒落にならない銀魂シリーズ | ナノ

 何度も聞く声

(pixivユーザーの白夜さんかた貴重な体験談をお寄せ頂きました。ありがとうございます。)


それは気が付けば、「あぁまた来たな」と思うようになった。
昔から何度も経験していて、余りにも現実からかけ離れているので「夢」のようにも思っていた。
だがしかし、何度も続くので流石に「夢」ではなく「現実」なんだなと感じ始めた頃。

時間は定かではない。とにかくそれは、「金縛り」から始まる。

身体が動かない。それは身体が疲れているからだと思ったが、あの時は全く違った。



深夜に目を覚ました時、同じように身体が動かなかった。
真っ暗な部屋の中、わずかに薄暗く見える部屋の構成。
「あぁまた動かない」と思っている最中に「それ」はやってくる。

足元から、ゆっくりと。
気配に気が付いて寝たふりを決め込む為に目を瞑る。
「それ」はその瞬間に這い上がってくる。
寝返りを打つだけで軋むパイプベッド。
わずかな身動きで音が鳴るというのに、自分の上に乗り這い上がる物音には全く反応しない。

無音で、ただ、ゆっくりゆっくりと這い上がってくる。

音がない分、気配が動くとどんどん夢うつつ感から覚醒していく。

ただ「見ている」それだけ。

「見ている」のだ。「見られている」のだ。自分は今、目をつむり寝たふりを決め込んでいるのに、自分が起きて意識があるのを「そいつ」は知っている。

簡素な部屋の中、隣の部屋に寝ている陸奥に声をかけた。
不思議な事に声は出る。
だが何度も声を出すが、それが届いている気がしない。

何かの錯覚のように、声が彼女に届いている気が全くしないのだ。
声は出ている。それは確実だ。
だがこの声は届いていない。この部屋が外と完全に隔たっているような感じがする。

起きている。声は出る。意識はあるのだ。
這い上がり「見ている」それから逃げるように声をあげても、きっと届いていない。
なんとなく分かる。
別の世界にいるような気がして、声を上げても跳ね返っているだけのような気がした。

何処にも、誰にも届かない。
見つめてくる「それ」へ振り向かなければならないんじゃないのか?
振り返って見なきゃいけないんじゃないのか?
バクバクと唸る心拍が相手にも聞こえそうに大きい。
徐々に怖くなって、不安が大きく広がってゆく。
そんな思考がグルグルと駆け巡って、それだけしか考えられなくなると。

そうしたら、聞こえてくる。必ず最後に、いつもの声が。

『また』と。

ふと身体が軽くなって、「それ」がいなくなる。
気が付いたらいつも朝。
びっしょりかいた汗が現実感を思わせるが、今でもあれは夢なのか現実なのか曖昧なまま。
確かなのは、足元から這い上がる気配と、何度も聞こえる声。性別は分からない。男女の声が混ざり込んでぐりゃりと曲がっているので定かではない。

最近だと体験したのは、二か月程前だ。
また、忘れた頃にやってくるのだろう。
そして最後に言うのだろう。

『また』と。


銀時:あの、白夜さん・・・お祓い行ってみた方がいいと思います・・・。

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