秘蔵のG-File
「俺は待ってる──お前が帰ってくるのを」
「そう?わかった。
それじゃあちょっと行ってくるな」
がやがやと賑わう日曜日のお昼。
大学の仲いいメンバー達…ではなく、そこには2人だけ。
今日は、高杉と銀時が付き合って丁度一年…俗に言う、記念日というやつだった。
中学生の時からずっと一緒にいた。
ヅラも巻き込んではよく喧嘩をして先生に怒られていた。
大人になるにつれ取っ組み合いの喧嘩は減ったものの、ずっと小言は言い合ってたせいで高杉は銀時の機嫌を損ねるのが多かった。
そんな時、いつも高杉の方から甘味を持って謝ってきた。
謝るといっても面と向かって言うのが恥ずかしいせいか、ヅラに言伝を頼んだり、甘味に小さなメモが仕込んであったり。
その時によって異なりはしたが、いつも銀時は『…直接言えよばーか』とだけ言って許していた。
この2人、喧嘩もするが息もぴったりだった。
高杉はその性格から、銀時はその容姿から、よく不良に絡まれたりすることが多かった。
そのおかげもあってか喧嘩には滅法強くなり、総督と白夜叉とかいうあだ名が流行ったのは今となっては黒歴史(高杉が満更でもなかったのは内緒)。
2人が一緒の喧嘩で負けたことはない。
頭が良いのか悪いのか、個々に仕掛けようとしても必ず途中でどちらかが現れた。
連絡手段もなかったのに、お互いがお互いの何かを感じ取ったかのように必ずその場へ現れては不良共を蹴散らした。
高校生の頃に1度だけ、警察沙汰になったことがある。
その時は珍しく、高杉と銀時の喧嘩が長引いて2〜3ヵ月程口を聞いていない時だった。
銀時が1人でいるところを狙われ、高杉が駆け付けた時に銀時は上半身裸にされ、乱暴されそうになっていた。
その時、高杉は我を忘れて怒り狂ってしまい、銀時が止めるまで暴走を続けていた。
銀時に乱暴した1人が、負けた事が悔しかったせいか隠し持ってたナイフで銀時を刺そうとした。
その時高杉は銀時を庇ったことで、左目を失ってしまったのだ。
銀時はそのことを今でもずっと悔やんでおり、その時期になると体調が優れなくなる。
その期間中は仲間とも距離を置くようにしていたが、そんな時はいつも傍らに高杉がいた。
銀時が何と言おうとも高杉は黙っていて、その側を離れることはなかった。
大学2年の春頃、銀時は高杉に告白された。
告白と言っても面と向かってではなく、2人しかいない時にまたも小言を言い合ってた時に
『ほんとめんどくせーよ。てめーなんか嫌いだ』
『テメーが俺を嫌いでも、俺はテメーが好きだけどな』
『─────え?』
あの時の高杉のしまったというような顔は今でも忘れられないと銀時は言う。
いつも余裕な雰囲気漂わせてる高杉が、目ェカッ開いてると思ったら段々赤くなって、耳まで赤くなったと思ったらわたわたしだして、何か言うのかと思ったら口パクパクさせていや、とかあの、とかしか言わなくて。
『…………さっきのは聞かなかったことにしてやる』
そういった時のあからさまにホッとした表情にに腹が立ったので。
『…ちゃんと、面と向かって告白してくんねーならお前とはずっと友達だから』
そう言った時の、鳩が豆鉄砲喰らったような高杉の顔を写真に収めることもせず、恥ずかしさのあまり銀時はダッシュでその場を去った。
それから暫くして、ようやく高杉から告白してもらえて今日。
付き合って一年の記念日デートへとやってきたのだ。
デートだけなら近場のショッピングモール等、2人きりで出掛けたことはあったが今回は違う。
銀時が前から行きたいと言っていたゆーえすじぇーへやってきたのだ。
前日の土曜日には大阪へきて、ホテルで1泊して朝からゆぅえすじぇーへ並んだ。
ゴールデンウィークや夏休みといった長期休暇に比べたらマシではあるが、それでも人は多かった。
「高杉、大丈夫か?」
「…あァ、大丈夫だ」
戻ってきた銀時はその手に持っていたトレイをテーブルへと置いた。
トレイにはピザとワッフル、あと飲み物でアイスコーヒーとミルクティーが乗せられていた。
「それならいいけどさ…食おうぜ」
パンフレット片手に、昼食を食べる2人。
「先にパリポタの券取りに行ってて正解だったな!
時間的にパリポタ行ってから他を廻る感じだな。高杉は行きたいとこねーの?」
「テメーの行きたいところ廻ればいい」
「高杉くんそういうのダメだよ。
ちゃんと彼女が聞いたら彼氏も一緒に考えなきゃ。あれ?俺彼女??」
「テメーが来たがってたんだから、テメーが行きたいとこ廻ればいい。
俺はテメーが喜んでるの見れたらそれだけで満足だ」
「……俺、お前のそういうとこ苦手だわ」
「は?」
顔を少し赤くして、なんでもねーと言ってワッフルへかぶりつく銀時。
高杉はよくわからないといった様子でピザを食していく。
「…あ、パリポタ行ったらローブ買おうぜ!!俺あれ欲しかったんだ!」
「…杖はいいのか?」
「んー…欲しいっちゃ欲しいけど、飾る以外使い道ないだろうし。
あのローブは冬とか羽織ってたら暖かそうだなーと思って」
「ここでは着ねーのか」
「それは流石に暑いよ。
他のお客さんで来てるの見てて暑そうだなって思うし…中にはコスプレしてる人もいてビックリだわ」
「あぁ、確かに。
正直あの寸劇の巨人の全身タイツは通報もんだよな」
「あれは笑った。
中身ただのオッサンだぜ?メタボだしパンツの線出てるし、あれはねーよな」
昼食を終えて一息ついてからパリポタゾーンへと向かう。
「あ、でも杖は適当に持ちたいな。
あのパリーが杖見つけた時の風がぶわってなるのやりたい!」
「…パリポタ好きなのか」
「まぁ普通に好きだよ。全シリーズ映画見たし。
パリーのエクスペクトパトローナームとかヲンのウィンガーディアムレヴィオサーとかさ、やっぱり魔法って使えたらかっこいいよな」
「…ウィンガーディアムレヴィオーサだろ」
「パリポタ好きなのかよ」
「全作本も映画も見た程度にはな」
「お前の方がパリポタ好きだろ」
2人で言い合いながら、パリポタゾーンへ向かう。
一緒にバタービール飲んでヒゲ付けて記念に写真撮ったり、ローブも買った(高杉が買ってくれた)。
杖持って風がぶわぁってなるのもやったし、ヲンの空飛ぶ車をモチーフにしたアトラクションも乗った。
その後ジュラシックポークのウォータースライダー乗ってびっしゃびしゃになって、落ちる瞬間に撮られた写真で高杉が真顔だったので爆笑して、濡れたことで少し寒くなったのでバックドリフトの炎で少し温まったり。
そのまま色々見て回っていたら、あっという間に空は赤く染まっていた。
「ふぅ!楽しかったー」
「まだ見て回らなくていいのか?」
「うん、もう大丈夫。東京帰ろ」
「…そうか」
そのままで出口へと向かい、コインロッカーに預けてた荷物を持って駅へと向かった。
夕方には大阪を出たので、20時過ぎには東京へ着き、電車内でぐっすり眠った銀時は、まだ少し眠そうな表情にだった。
「ふぁ〜……高杉この後予定は?」
「昨日今日と、テメーと一緒に居るって予定以外なんもねーよ」
「あ、そ…////
それじゃこのままお前ん家行っていい?
今日のお礼に晩飯作るよ」
特に断る理由もないので、スーパーへ寄ってから高杉の家へ向かう。
高杉はマンションに一人暮らしなので、そのせいかご飯はいつも外食で済ませるので冷蔵庫の中は殆ど空だ。
ゆぅえすじぇーで色々食べたせいか、そこまでお腹が空いてるわけではないので、晩御飯は簡単なものにする。
「んじゃあ台所借りるねー」
銀時は自分の荷物を玄関へと置き、スーパーの袋だけ持って台所へ行く。
高杉は1泊した服の入ったカバンや荷物を適当に置き、先にパソコンの電源をつけてスマホを繋ぐ。
今日撮った写真データをパソコンへとコピーし、高杉秘蔵の『G-File』へと保存する。
このファイルには銀時が高校生からの写真が残されている。
高校生にもなると、手持ちのケータイやスマホで写真を撮る事が多くなる。
高杉自身はあまりカメラが得意ではないが、銀時はよく自撮りしていた。
中学でこちらに引っ越してきた銀時は、幼い頃の写真というのがないらしい。
なので、中学で修学旅行の思い出に写真を撮るということにすごく衝撃を受けたのか、スマホを持ってからはよく写真を撮るようになった。
基本的に銀時が、友人らを撮る事の方が多いが、付き合うようになってからは高杉が銀時の楽しそうな姿を写真に収める事が多くなった。
それを高杉は銀時のスマホへと送りもするが、データが消えないようにパソコンとUSBにもコピーしている。
銀時に頼まれて撮った写真もあるのだが、『G-File』には高杉の銀時隠し撮りした写真も多く保存されていた。
USBにもコピーし終えたところで、銀時の呼ぶ声が聞こえたのでパソコンの電源をオフにしてリビングへと向かう。
そこにはご飯、豆腐とわかめのお味噌汁、ほうれん草のおひたし、胡瓜と木耳の和え物、スーパーで買った小さいめの豆腐ハンバーグが2切れと並んでいた。
「お昼がアメリカンな感じだったからさ。やっぱ日本人は米食わねーと」
さ、食おうぜと言って、2人は席についた。
銀時が後片付けをしようとしたら高杉がやると言うので、お言葉に甘えてソファで食後の休憩にスマホをいじる銀時。
暫くして片付け終えた高杉がリビングへと戻ってきた。
その手にはマグカップが2つ。
高杉用の紫のカップと、銀時用の水色のカップ。
銀時が高杉の家にしょっちゅう遊びに来るので、高杉のものと色違いで購入したのだ。
銀時は高杉からカップを受け取ると、高杉がいつものように銀時の隣へ座って、銀時はその肩へもたれ掛かるような姿勢へと変える。
「お疲れ。
悪ィな、後片付けしてもらって」
「何言ってんだ。飯作ってもらったんだからそれぐらいするさ」
「飯はアレだ、今日の旅行のお礼だよ」
「礼なんざ必要ねェよ。
テメーが行きたそうにしてたから一緒に行っただけだ」
「…それでも、ありがとな」
カップのカフェオレを一口啜ると、じんわりとした甘さが口内へ広がる。
銀時は高杉の作ってくれるカフェオレが好きだった。
ミルクとコーヒー、砂糖が絶妙なバランスだった。
そのまま一気に飲み干して、カップをガラスのテーブルへと置く。
頭は以前高杉の首元へと埋もれたまま、
「高杉って人混み嫌いだし…絶叫マシンも得意じゃねーじゃん。
それなのに、俺が行きたいって言ったの聞いてくれたんだって…俺、スゲー嬉しい」
「………そうか」
高杉がそっけない返事なのはいつものことだ。
銀時はそれが照れ隠しだとわかっているので、内心でふふ、と笑う。
(……うん、もう大丈夫。
高杉なら…高杉となら───)
銀時は高杉のカップを奪って、テーブルへと置く。
オイという高杉の声を無視して、高杉の膝へまだがって己の胸へと高杉の頭を抱きしめる。
突然の出来事に、高杉は驚いた。
だって、銀時は…
「ありがとう、高杉…俺、もう大丈夫だからさ…今日泊まっていってもいい?」
なにが、何てこの状況だとすぐにわかった。
銀時は、あの時乱暴されてからそういう行為にトラウマを抱えていた。
肌が少し触れたり手を握る程度ならなんら問題はないが、押し倒されたり突然抱擁されたりすると吐気がこみ上げてくるのだ。
高杉と付き合いだした当初に何度かチャレンジしたのだが、やはり途中で気持ち悪くなったので諦めた。
銀時は何度も『いつでも別れるから』と言ったのだが、高杉は聞く耳持たず『俺はお前の身体が目当てなわけじゃねェ。例え一生お前と繋がれなくとも、俺は坂田銀時と一緒に居てェんだ』と言われてしまえば銀時は何も言い返せなかった。
「…無理すんじゃねェ。俺は別にできなくても、テメーから離れるこたァねェよ」
少しずつ慣れてきたとはいえ、いきなりそういった行為を行うのは銀時の身体に負荷がかかる。
それに、高杉にとっても『自分のせいで銀時が苦しんでいる』という事実に胸が締め付けられるのだ。
「本当に、大丈夫なんだ。
いつもならあの時の記憶が頭の中を過ぎるのに、今はそんなこと全然なくって…
不安だからとかじゃない、俺が高杉とシたいって思ってるんだ」
その言い方はずりィ、と高杉は思う。
そんなこと言われてしまったら、我慢できなくなってしまうではないか。
「…先に風呂行ってくる。
適当に、着るもの置いといてくれよな」
そう言って、銀時は高杉から降りようとして───
───────ぎゅっ
銀時が高杉の上から降りた瞬間、離れていこうとする腕を掴んで抱きしめた。
銀時はそれに驚きつつも、どこか安心した様子で高杉を見つめていた。
「な?大丈夫だろ」
「……あァ、そうだな」
「高杉も風呂入るだろ?」
「そりゃあな」
「んじゃ、ついでに湯も溜めておくから。
早めに上がるようにするな」
そう言って銀時は高杉をゆっくりと剥がすように風呂場へと向かった。
銀時が上がったあと、入れ替わりで高杉も風呂に入る。
銀時は高杉が持ってきてくれた黒のVネックのロンTとジャージを着て高杉の寝室に入り、ベランダの風景を窓越しから見ていた。
部屋の灯りはつけず、窓から入ってくる月明かりが室内を照らす。
高杉はマンションの最上階に部屋を借りているので、窓からの眺めがいい。
特に寝室から見える景色が銀時には一番お気に入りだったりする。
「……頭、ちゃんと乾かせよ」
いつの間にか時間も過ぎていたようで、風呂から戻ってきた高杉は黒の半袖Tシャツにグレーのスウェット姿だった。。
もう眼帯は着けておらず、己の首にかけていたタオルで銀時の頭を拭く。
「俺は自然乾燥させるタイプだからいいんですぅ」
「そんなんだからずっとくるくるしてるんだろーが」
「なにをぅ?」
銀時はタオルを持っていた高杉の腕を掴み、ベッドの方へと導いた。
銀時は高杉の腕を離すと、ベッドへと腰掛ける。
ここでやってという意思表示らしく、自分ではやる気がないようだ。
「…テメェ、やる気なしか」
「だって高杉にやってもらうの好きなんだもん」
もんってなんだと思いつつも、高杉は一つ溜息をつく。
そんなことを言われると弱い自分が少し憎い。面倒くさいよりも愛しいが勝ってしまうに決まってる。
「…昔はこんなこと、高杉にしてもらえるだなんて思ってなかった。
友達として傍に居てくれてると思ってたから…正直、今もまだ夢の中にいるんじゃないかって思ってる」
「夢じゃねェよ」
「わかってる。わかってるけど…」
「けど、なんだ?」
「今すごい幸せでさ」
へへ、と照れくさそうに笑って高杉を見上げた銀時は本当に美しくて。
高杉は思わず、手を止めて銀時へと口づける。
軽く触れるだけの口づけが、ちゅ、と音を立ててゆっくり離れていく。
急ぎすぎたか?と思うも、やってしまったものは仕方がないと腹をくくった高杉が少しずつ目を開くと、そこには顔を真っ赤にした銀時の姿が─────
「…う、うァァァああ!!////」
「ゥぐっ」
頭に乗せたままのタオルを高杉の顔面へと押し付ける。
「てめ、なにしやが、」
「見るな!見るんじゃねェ!!」
タオルを退けようと高杉はもがいくが、銀時がそれを阻止する。
「…………なん、だよこれ……」
小さく呟かれた銀時の言葉に、高杉はもがいてた手を止めて、ゆっくりと銀時の方へと手を伸ばす。
頬に辿りついた手で撫で上げ、耳朶を摘むようにしてそのまま項の方へと伸ばす。
銀時からの抵抗はなくなり、パサ、と音を立ててタオルが膝へと落ちる。
「……銀」
「…おかしいんだ。
そういったことをされるのが怖かったハズなのに……
相手が高杉だってわかったら全然怖くなくて…むしろそういうのが嬉しいって思ってる自分がいて」
「銀」
「怖いって微塵も感じなくって、心から安心して高杉に触れることが、触れてもらえることが嬉しくって」
「銀時」
「今…俺、すごくドキドキしt」
「銀時!」
堪らず、銀時の頭を己の胸に押し付けるようにぎゅうぎゅうと締め付ける。
んぶって何か潰れた声が高杉の耳に届いたが気にしていられない。
「お前、ホント……」
小悪魔だな、と思うが言わない。
前にそれで喧嘩をしたのだ、同じことは繰り返したくない。
「高杉…」
「ん?────うわっ!」
銀時が服をちょいちょいと引っ張るので、なにかと思って頭を離した高杉だが、いきなり倒れる(銀時にとっては後ろへ倒れる)ように引っ張らた。
先ほどよりは些か落ち着いたようだが、それでもまだ頬の辺りを赤く染めた銀時が、少し潤んだ眼差しで高杉を見上げていた。
無意識に、高杉の喉がゴクリと音を立てた。
「…本当にいいんだな」
「うん、高杉なら大丈夫」
「………途中、止まってやれねェかもしんねーんだぞ」
「大丈夫だって」
「…本気で嫌になったり、気持ち悪くなったら殴れ」
「んぅ」
銀時が返事をする前に、高杉は銀時へと口づける。
最初は触れているだけだったが、だんだんと深いものへと変わってゆく。
「…ん…むぅ……ふぁ、…ん…」
銀時から時々漏れる声や、ビクビクと震える身体がまた高杉を興奮させる。
銀時のTシャツから手を入れて、ゆっくりと捲っていく。
焼けると赤くなるだけで留まる銀時の肌は男にしては白く、適度に引き締まっている。
乳首も綺麗な…食べたら美味しそうなピンク色をしており、甘いものばかり食べているとはいえ太ってはおらず、むしろ少し筋肉質だ。
運動もしているというわけではないので、世の女性からすれば羨ましいこと山の如しだろう。
高杉は、漸くこの白に触れることを許された。
コイツは高杉だけのものであるという事が己の欲望を暴走させそうになるも、高杉はそれをなんとか落ち着かせる。
ここで暴走してしまっては意味がない。
高杉は思う。
何年、この時を夢見ただろうか。
初めて会った中学の時が、今思えばあの瞬間から一目惚れだった。
それから考えたら約10年…その間、ずっと片思いだった。
絶対叶わないと思っていた。
それが今は。
「…たか、すぎぃ……」
つい、慣れていない銀時相手に深く長いこと口付けてしまう。服を引っ張られなければまだまだ貪っていただろう。
銀時の口内は甘く、いつまでも味わっていたいと思う程には夢中になっていた。
口を離すと同時に聞こえた銀時の声は蕩けており、高杉の腰に甘い痺れをもたらした。
顔も赤く表情ぽーっとしており、それがどこか色っぽくて。
口の端からはどちらのかわからない涎が垂れている。
「…ハッ、キスだけでとろとろじゃねーか。大丈夫かよ」
「うぅ〜…仕方ねーだろ!
ディープなんて初めてなんだから!」
ぐし、と腕で垂れた涎を拭う。
高杉は銀時のシャツを脱がすとその辺に放った。
口内を蹂躙されて感じたのだろう、乳首がピンッと立っているのがわかった。
「お前、敏感だな…
キスだけでこんなにおっ立てやがって」
「だっ、て………」
「だって、なんだよ?」
「…惚れたやつに触られてんだから感じるに決まってるだろーが!」
さっきから銀時は反則ばかりだ。
高杉はずっと我慢してるっていうのになんでこう煽ってばかりくるのか。
こっちの身にもなってみろ、と大声で言ってやりたくなった。
「ゆっくり進めて行きたかったが、我慢できねェ」
「んァ!?////」
高杉はずっといやらしく誘ってきていた乳首へとむしゃぶりついた。
先程とは違い、口を塞ぐものがないために銀時の声があがる。
「ひ、ア!んん、ふ…たか、…すぎ、それ…や、ァ!」
「嫌じゃねーだろ?」
高杉は銀時の下肢へと手を伸ばす。
銀時のそこは既に張り詰めており、高杉が触れたことによりビクリと震える。
「すっかりココも育っちまったな…」
ぐにぐにと、指先で感触を楽しみつつも、高杉は一気にジャージとトランクスを脱がせる。
いきり立ったイチモツに引っかかり、ぶるんと勢いよく飛び出た。
「…濡れてる」
「うううううるせェバカ!!
そんな説明していらねーからさっさとしろ!」
「バカってなんだ。テメーより頭いいわ」
銀時の反論を聞く前に、高杉は銀時のイチモツに優しく触れた。
敏感なそこを触られたことにより一際甲高い声を出すも、高杉にとっては煽られる材料にしかならなかった。
自分で抜くよりも優しく、様子を見ながら銀時がどう感じるかを模索していく。
だんだん、艶めいてきた銀時の声に高杉は己のモノが頗るのを感じた。
…想像していたよりも遥かにヤバイ。
高杉だって健全な男性だ。
好きな子の淫らな姿を想像して抜いたことはある。
ただ、高杉の場合は相手が同性だったというだけの話で。
「俺だけ裸とかヤダ…高杉もぬげ」
くい、とシャツを引っ張るとともにお強請りする銀時がこんなにも可愛いだなんて。
実際目の当たりにしてみると余裕なんて一切なかった。
がっつきそうになる己を押しとどめるのに精一杯だなんて思ってもいなかった。
「たか、すぎ……」
高杉もシャツを脱いだことにより、銀時と高杉を隔てるものは何もない。
銀時は高杉の首へと腕を回して抱き寄せる。
「もぅ、はやく入れて……」
突然の催促に高杉の理性が吹っ飛びそうになった。逆に、吹っ飛ばなかった己の精神力を内心褒め称えていた。
「な、に言ってんだ…慣らさねーと後が辛いだろ」
「…………った、から………」
「は?なんt」
「自分で、ならしたから……」
────いま、なんと?
( じ ぶ ん で な ら し た ? ? )
まさかの発言で高杉は思わず固まった。
だって、あの銀時が。
「……おれだって、トラウマ抱えてたかすぎに触れられないのイヤだったから…
いつかは触れたい、たかすぎに触れてほしいって思って…ちょっと、ネットとかで調べてさ………」
「……」
「最初はやっぱりちょっときもちわるかったんだけど、でも、だんだん見てるうちにたかすぎにされるって想像したらもう堪んなくなって…
相手がたかすぎだって思ったら今度はもっと触ってほしくなって…
……いつか、こうなった時にちょっとずつ自分の指でならしてったから…」
銀時のとんでも発言に未だ追いつかない高杉は思考回路がショートしている。
そんな高杉にしびれを切らした銀時は。
「…お願い、はやく、」
うつ伏せの状態で膝をたたせ、右腕で上半身を支えた銀時は、左手で己の菊門を拡げるように高杉を誘う。
そんなことをされて黙っていられるほど高杉は紳士ではなく。
頭の中のブチッという鈍い音を立てた何かに駆り立てられるかのように、スウェットから己のイチモツを出しては、ベッドヘッド横にあった棚からコンドームを1つ取り出してすぐ様装着すると、銀時の菊門へと狙いを定めた。
「〜〜あぁあああァァア!!/////」
ズン、という衝撃と共に一気に挿入された銀時。
多少自分で慣らしたとはいえ、いきなりの挿入に銀時はイッてしまうと、耐えきれずポロポロと大粒の涙を零す。
「お前、ホント………」
「な、に──ひゃああァァ!!////」
小悪魔なんて優しいモンじゃない。こいつは魔王だ。
計算の元そう動いてるならまだしも、無自覚ときたもんだ。どうしたって、勝てるみこみなんてない。
惚れた方が負けとはいうが、こんなにぼろ負けになるとは。
バックの状態でガツガツと腰を振る。
「…っ、ハ!…ぎん、ときぃ…」
「や!あぁ、はっぁ、ん!ひゃあっ!!
た、か…ぎぃ!やら…こわ、ッアァ!」
「こわくねーだろ?俺が居てんだからよォ!」
「ヒッ!?あ、アァ、ン!!
ま、…しん、ちょっ!ま、んァあ!!」
銀時が何か言いたげにしているので、高杉は一旦腰を止めて耳元へと口を寄せる。
その際に腰がまた一段と寄せることで深く入ってしまったのだが致し方ないことだった。
「ヒッ!?あ、ァ…」
「…どうした」
高杉が耳元で喋る度に肩を震わせる銀時。
その度にナカもきゅうきゅうと締め付けてくるので高杉は息を詰める。
「っ、……」
「しん、す…いっか、ぬいて……」
無理矢理突っ込んでしまった感はあるが、それでも誘ってきたのは銀時の方だ。
高杉としては何故抜かなければならないのか…少し機嫌が悪くなる。
「…ハ、なんでそんかなこと」
「おねが…いっかい、ぬいて…?」
少しずつ慣らしていたのは事実だろう。
挿入の際に切れた感じはしなかったし、入口付近は入りやすかった。
そのかわり奥の方の締め付け具合が凄まじく、一瞬でもっていかれそうにはなったのだが。
…やはりキツかったのだろうか。
「もう、い、いよ……」
銀時は身体をうつ伏せから仰向けの状態へと変えると、脚で高杉の腰を捕まえる。
どうやら、この状態で入れろということらしい。
……イヤになったとか、そういう訳ではなさそうだ。
「なんで、わざわざ…」
「この、ほうが…しん、すけ…のかお、みれ、るから…」
きゅん、と高杉の胸が鳴る。
バックが怖くなったから、顔が見たくて体位をかえたがったのかと納得はしたがどうしよう。可愛いすぎじゃねーのかコイツ、と思ってる高杉の顔はまさに真顔そのものだ。
「あと、」
───ぎゅっ
「これでしんすけを…抱きし、めれるから…───ヒァあ!?」
高杉はイチモツをまた銀時の挿入させて、脚を片方肩へと担ぎ上げてそのまま激しくピストン運動を再開させる。
「あ、アァ!…ひ、…しん、すけぇ…
きもち、ぃ…きもちイィよォ!!」
「あァ、おれも最高だぜ?…ぎんときのナカ、すげぇ気持ちいい…」
「ほん、と?ァ!…しん、すけ…きもちぃの?…」
「ったりめー、だ…惚れてる奴とつながれたんだ…気持ちヨすぎてイキそう…」
「い、しょに…イこ?、しんすけ、いっしょ…ァァあァああア!!」
腰の動きを速めることで同意と返した高杉は、銀時の顔の横に手をついて空いた手で銀時のイチモツへと刺激を与える。
「や!しん、もぅ!イク、イっちゃ…
アッ!!ひ!?あぁあああぁああ!!」
「クッ…」
最奥を穿つような突き上げに我慢出来ずにイク銀時。
イッた際の急激な締め付けに、高杉もそのまま中で白濁をぶちまけるようにイク。
「しん、すけぇ…すき………」
それだけ言うと銀時は疲れたようで、気絶するように眠りについた。
次に銀時の意識が浮上したのは太陽がだいぶ高くなった時だった。
「ふ、…んぅ……………!?」
目を開けたらそこには高杉の顔面がドアップであった。
一瞬、状況が理解出来なかったが、少しずつ昨夜の記憶が呼び起こされてきて現状を把握した。
「〜〜〜/////」
声にならない声が漏れる。
ジタバタと暴れたい衝動に駆られるが、そんなことをしては高杉を起こしてしまう。
「………」
少し、冷静さを取り戻して高杉の寝顔を観察する。
あどけない顔をして静かに眠る高杉は、普段見る姿とはまた別の色気が出ていて。
「…寝顔までイケメンとかなんだよ」
ムカつくなぁ、そんなとこも好きだけど。
小声で零す愚痴も、寝ているのなら聞こえていないだろうと、好き勝手言う銀時。
翌々、自分の姿を確認すると真っ裸で。
高杉は上半身は何も身に纏ってはいないが下半身にはスウェットを履いていた。
その時に丁度見てしまった。
「な!?…んだよこれ…!」
思わず大声が出そうになるが、なんとか一音だけにとどめた。
服の有無を確認する際見つけた己の胸あたり。
…いや、とりあえず見えたのが胸あたりというだけで恐らくは背中や首にもあるだろう。
虫さされとは違う…所有痕がいくつもついていた。
こんな状態で学校へ行けるわけがない。
いや、行けたとしても体育など受けれる訳がない。
そもそも色恋沙汰に飢えてる年頃だ。
バレた日には茶化されるのが目に見えている。
流石につけすぎだろこれは…
「…………ありえねぇ…」
講義によっては休むのも視野に入れつつ、今日の時間割を思い出す。
……人が悩んでるのにも関わらず、ぐーすか寝てる高杉に少なからず腹の立った銀時は。
「…少しぐらい、仕返ししてもいいよな」
眠っている高杉の首元へ口を近づける。
なるべく髪と服の間、ギリギリ見えそうな位置を探して吸い付く。
「……よし」
今日は大学に行かなくても大丈夫なので銀時は休むつもりだが、高杉がもし行くのであれば、その頃にはくっきり浮き上がっているだろう。
「ふふん。ザマーミロ」
「…何がザマーミロだって?」
ごろん、と、突如視界が変わったと思えば、目の前には先程まで寝ていたハズの高杉の顔が。
「…オハヨーゴザイマス」
「おはよ。で、何がザマーミロなんだ?」
「…寝てたんじゃナインデスカ?」
「あぁ、寝てたとも。
テメーが横でバタバタしてるくらいには目を覚ましたな」
「それってほぼ最初の方じゃねーか!!」
うわぁ最悪だ…と銀時は項垂れる。
それってつまり、独り言全部聞かれてたってことなんだろ…
「…で?何がザマーミロなんだ?」
すごくいい笑顔で聞いてくる高杉に銀時は冷や汗が止まらない。
「いや、えっと、そのぉ…」
「朝から誘ってくるたァお前も中々淫乱だな」
「誰が淫乱だ誰が!っつーか誰も誘ってねェ!!」
「誘ってない、ねェ…」
無自覚の天然程恐ろしいもんはないな、と高杉は心の中で愚痴る。
己の前だけでそうならいいものの、全く無意識に誰が相手でもそういう態度なら気が気でない。
…特に、大学で何かと銀時につっかかってるあの狗っころを無意識に誘ってるんだと思うと腸が煮えくり返る。
「…高杉?」
急に黙りこくった高杉を心配した銀時は、少し伺うように声をかける。
そんな姿にさえ、銀時の優しさが垣間見えて胸いっぱいに何かがこみ上げる。
「…なんだ?」
「……朝からは致しませんよね?」
「てめーがこれ以上誘ってこなきゃな」
「だから誰が誘ったよ!?」
…まぁあの狗っころがどうしようと、銀時は俺が手放さなけりゃ、ずっと俺のモンだ。
せいぜい悔しがってるこった。
「畜生…まさかこんなにも腰が痛くなるなんて。
これじゃあ朝飯すらまともに作れねー…」
「あ?朝飯くらい、適当にコンビニでパンでも買えばいいだろ?」
「え、だけど…高杉、和食の方がいいだろ?」
「え」
確かに高杉は基本和食派の人間だ。
洋食も食べたりするが、和食があれば和食の方がいいというタイプである。
だが、それを誰かに言ったことはない。
「普段の食生活見てたらわかるよ。
だから昨日も早めにこっち帰ってきて晩飯は和食にしたんだし」
まさか、それがバレてるとは思ってなかった。
普段ちゃらんぽらんなクセに、こういう事には敏感だなんて。
「…ホントはそれだけじゃないけど」
「?」
「………はやく2人きりになってイチャイチャしたかったから…」
「…そ、いうのははやく言ってくれりゃあ、向こうでホテルでも予約しといたんだが」
「ホテルとかヤダよ。
あーいう新品の匂いって嫌いだから、ヤるなら高杉の匂いのするこっちの方がいいと思ったから黙ってたんだしよ」
(……コイツはホント…!!)
別の言い方はなかったのか、と思わずにはいられない。
(煽りまくるコイツが悪ィんだ。
俺は悪くねェよな?うん、悪くねェ)
「銀時、今日の予定は?」
「え、俺?俺は今日は授業とってないから休みだけど…」
「ならばよし。ヤるぞ」
「…は?」
「俺も今日は大した授業じゃねーしな。
1日くらい大丈夫だ」
「イヤイヤイヤイヤ!そうじゃなくって!!」
「散々煽ってくれたんだ。
きっちり身体にお返ししてやるよ」
その日。
昨夜が初めてだったのにも関わらず銀時はまたも鳴かされ続けてしまい、それに加えて身体も幾つか開発されてしまって機嫌を損ねてしまった高杉が、後日学内で謝罪する姿が見られたとかなんとか。
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姫子師匠誕生日おめでとうございます!!
というわけで今回は師匠ハピバ記念小説です。
高銀で大学生パロです。
鬼畜な杉様も好きですが、今回は甘々を目指しました。
ちゃんと甘々になったかな…
書いてる私としては「リア充結婚しろ」としか思わなんだ…
師匠がTwitterで「誕生日近いから高銀くれ!」と言ってたのに反応したのが始まりです。
「希望な設定などありますか?」と聞いたところ「なんでもいいけどあえて言うならおデートしてほしい/////クライマックスはエッチしてくれよ///」てな感じでお題頂きましたのが今回の作品です。
あとちょっと色々捏造してますのでご注意。
そんな高杉も面白いだろなーって思ったんで…
没頭の台詞は診断メーカーで出たやつを使ったんですが、なぜこんな台詞になったのかww
診断メーカーは楽しいです。
ちょっと詰まった時に使うとうおお!ってなる。
書いててゆぅえすじぇー行きてーなってなった…
ハリポタってかスパイダーマン出来てから行ってないよ。
っつか私が行ったのって出来て1年目の時だけだわ。
めっちゃ並んで年パス作った記憶が…
なのでハリポタゾーンのお話は最近行った姉のお土産話から使ってます。
杖もったらぶわぁってなるのは実際にあるみたいなので気になりましたら是非。
あ、あと全身タイツも本当にいたんですって。
だからメタボ腹とかパンツの線もマジネタですww
話によると駅から向かう途中で遭遇したらしいので、最低でも駅からは全身タイツだったようです。
なのでそこの高杉と銀ちゃんの会話はリアルで姉妹での会話というw
タイトルがホント思いつかなくてな…
決まるやつはすぐ決まるんだけど、決まらないやつはホント決まらない…
こういうのって皆様どうやって考えてるんだろ。
私ももっとインスピレーション働かせなきゃダメかな…
前作の閲覧・評価・ブクマ等ありがとうございます。゚(゚^ω^゚)゚。
あたい、銀魂大好きで本当によかった!!(こういう事です!!(*´ω`))
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