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 暗夜行路ー愛しきお前と道行きと洒落込もうかー

嗚呼、てめえは何時視ても眩(まばゆ)いぐれえに真っ直ぐで綺麗なヤツだなあ、そう俺は手慰みに持った煙管を肺まで深く吸い込みながら思う。
ヅラと背合わせに立ち回り縦横無尽に暴れ回る姿は、まるであの頃まで時間(とき)を巻き戻したみたいで、其れがまた一層 俺の開けられた大穴を抉る。
なあ、銀時よお。
てめえは何故 あの時、俺の手を離しちまったんだ。俺ァ、何時でもどうでもてめえにだけは伸ばす手を惜しまなかった筈だぜ?伸ばされる腕は何本もあった。選べる道も。手繰る未来(あした)も。其れこそお前には無限の選択肢と先が示されていた。

先ず坂本を切った。

桂と袂を別った。

俺とーー離れた。



あの時、俺達全員の道標(みちしるべ)であり光である先生を奪われ、喪ってから、魂まで凍て付くような極寒の寒さに凍死しかけた俺達は、寄り添い舐め合い互いで暖を取るより他に手段(てだて)が無かった筈だ。
喩え其れが人の道に外れた歪んだものであったにせよ、だ。
光と熱を失った身を生かすには別の存在(もの)で飢えを満たすより他は無かった。

そうして俺ら、松陽の弟子達は互いに互いを支えに立ち、憎しみを糧(かて)に屍の山を築き味方さえ利用しては闘った。
其の内で、俺は何時しかてめえこそが俺の求める光何だと思っちまったんだよ。
先生の代わりでも、閉ざされた闇に残された僅かな光の残滓でも無い。
紛れもなくてめえ自身こそが、暗黒を遠ざけ明けの黎明を呼び込む先駆けの輝きである、光の使者。
ならば。共に在って誰が其れを望まず掴まずにはいられようか。

あの、太陽其のもののような、と云われた男でさえお前を欲しがったんだぜ、銀時。
知略並びない攘夷の軍師と称された桂でさえ、お前を手放し難い、ともがいていた。

だのに、何故、俺もお前を傍らにしたいと、只唯一の片羽にしたがっているものと、気付いちゃくれなかったのか。
お前は。
確かにお前には一人我が身だけでふらりと宙(くう)を舞い行く自由さが誰より似合う。必然だ。
だがなぁ、銀時。片羽しかない俺が俺として存在(あ)る為にゃ、昏い道を行く為にゃ、てめえという翼と片目が如何しても俺には必要なんだよ。

一つ目で見通せる先行きなんてのぁ、俺にはねえ。
諦めないぜ、俺は。
往生際が悪りいと呆れられようが罵られようが拒まれようが。
必ずお前を再び連れ戻してみせる。
俺の傍にな。

今度 捉まえたらもう容赦はしねえ。てめえの首根っこに首輪を付けて、身体も精神(こころ)も雁字搦めに縛って巻いて存分に俺という毒を注ぎ込んで染めて甘く熟したら、其の時やぁ、てめえの頭から爪先までバリバリと喰らいつくしてやるよ。

もう二度と俺から離れたりはしねえようになァ。
其れまで精々、束の間の自由を味わっておくがいいぜ。仲間だ、家族だ、世間だ、と甘っちょろいぬるま湯に浸かっていればいい。


煮え滾る赤い熱湯の張られた血の池もお前と共に煮られるならば、何てこたぁねえ。悪くはない結末だ。

ーー地獄への道行き、付き合ってもらうぜ?なあ、銀時よ。



そんな俺の澱みきった感情に気付きもしないで、視線の先の銀色がきらりと陽光を弾いてたった一つ残された俺の眸を眩しく射抜いて眩ませた。


ー嗚呼、たまんねえなァ。てめえはよぉ、何処まで俺を煽りゃあ、気がすむんだ…?ー




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ピクシブID:5841569神有月さんから頂きました。
リヴァエレから高銀にジョブチェンジしてしまった記念すべき第一作目がヤンデレ高杉さん!!うっひゃああああ!私も堪んねぇよぉクックック。そして私にプレゼントして下さいました素晴らしい作品です。記念すべき一作目が贈り物で、本当光栄です。神有月さんの他の進撃小説皆様もご覧あれ!リヴァエレ美味しい。
本当にありがとうございます!
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