何もかも冷たくて








眠たさとは違った、瞼の重たさが酷く疲れる。まだ見えている目が彼を捉えると、私は残された余力を使って彼と向き合う体勢にした。止まろうとしている機能でハルピュイアを意識に取り込むのに苦労した。





不覚にも討ち漏らしていたテロリスト…イレギュラーの残党が彼女を撃った。当然、生身の人間である名前1がその場に崩れるのは数えるほどもない。光弾が人間独特の柔らかい皮膚を容赦なく突き破って、同時に体内に収まっていたはずの物も外に投げ出された。直ぐに元凶を見つけた俺のプラズマビットが敵を追撃してイレギュラーは壊れたが、名前1はやはり動かなかった。管理下に置いていたエリアの整備に同行していた彼女の警備が薄かったと、後悔しても結局は結果論に過ぎないのが歯痒い。



『……』


やはり生き物という物は扱いが難しいようで、機械とは比べ物にならないほど脆い。それは今の名前1が明確にしていた。腕の中で横になっている彼女はゆっくりと深い呼吸だけを必死に働かせている。




『……死ぬのか』

「…みた、い…だね…」

『死ぬ、のか…』



こんなとき、どうすればいいか解らない。俺に涙を流すことが出来たなら、この瞬間にその機能を使って少しでも今の押し寄せる感情を埋めようとしただろうか。何も出来ない己の無力さに嫌悪している間にも、名前1はどんどん遠くに離れていくようだった。




「ハルピュイ…ア様…」


彼女は血色の良くない手首を天を仰ぐように、俺を求めたのにそれを握ることくらいしか出来なかった。冷え固まってゆく名前1の体を抱き温めようとしたが、微量の機械熱では限りなく足りない。自分には体温が無かった。





冷たい


2010506


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