麻痺していく





『…いいから、行ってこい』


名前1の背を押す。名残惜しそうに玄関の扉を閉めた彼女にまだ自分は救われていた。扉から鍵の掛かる音がして、一人残された自分は空虚感に支配されつつある。指先に残る名前1の温もりは惜しいが擬似体であるコピーロイドから、電源の着いたままのPCに戻った。



**


名前1とオレはオペレーターとネットナビで、長らく連れ添った仲だ。オレはオペレーター以上の存在として彼女を見ていたから名前1の存在は大きく、オレの意思に気付いていたかは分からないが彼女もオレを大切にしてくれて本当に嬉しい。だから、出来る限りのことは名前1の為に尽くしたいし、応えたいとも思う。


オレの仕事は…最近増えた。名前が自分を望んでくれているのにオレも名前1も何だか心が晴れていないようだった。彼女は小さく謝るから直ぐにそれを否定する。インターネットに向かうオレの気が重いのは、名前1から預かったメールをまた手にしているせい。…彼女はいつしか他の存在も見るようになっていた。


名前1が幸せそうにしていると、自分も嬉しいはずなのに心が満たされない。別に彼氏さんとの時間を否定するつもりは無い。しかし、やはり名前1を取られたというか…虚しさに似た寂しさに囚われる。自分以外の異性に嬉しそうにしている名前を見ていたくなくて、邪魔をしたくなくて、進んで留守番をして気を紛らわせていた。そんな情けないオレを心配して早く帰ってきてくれる名前1は本当に優しい。




「エレキマン、いつもありがとう。…そして、また、ごめんね…?」




いや、いい。と後者の言葉を否定して今日も行ってしまう名前1を見送る。申し訳なさそうな色と、外出する期待の輝きの両方を持っていた名前1の目を見ていられなかった。彼女の幸せは壊したくないが、自分の幸せも壊したくないオレはきっと我が儘で欲張りだ。



日常が麻痺してい

2010409

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