たゆたう たゆたう
そんな心地好い場所から生まれた私という存在
眩い光を朧気ながらに感じ、目を細める
辺りはざわざわと騒がしい
だが、その場が歓喜に溢れていることだけは、感覚的に分かる
≪我らが神子様が!神子様がお産まれになった≫
≪めでたや、めでたや≫
≪おめでとうございまする≫
耳に、声が届くようになった
「妾の可愛い、やや子や」
一際優しさに溢れる美しい声音の女性
私は直感で、わかった
(……この人が、私のお母さん)
口調がなんだか不思議な感じだったが、すぐにそんなことは忘れた
「……名は、宝華じゃ」
≪宝華様、宝華様!≫
≪お美しい響きでございます、主様!≫
目がまだ見えないので、声だけが今は頼りだ
しかしそうこうしているうちに、目も見えるようになってきた
ぼやけていた視界が、少しずつ鮮明になっていく
(……眩しい)
きらきら輝くような世界だ
産まれたばかりだからかもしれないが、世界が眩しく感じられる
「宝華や、よう産まれてきやったな
妾が宝華の母や」
視界に写る、美しい女性
古めかしい言葉が彼女の艶めいている唇から溢れ落ちる
(……ああ、)
美しい女性に抱き上げられ、私の身体は歓喜に震えた
これほどまでに喜ばしいことなど、前世でも体験したことはないだろう
産まれたことが、母の子になれたことが、嬉しくて嬉しくて
――私は涙を溢すのだった
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