「母様、高淤様、宝華です」


「お入りなさいな」


宮の前に到着した宝華はそう告げる
すぐに母の許可が下り、ハクとともに足を進めた


「久しぶりだな、宝華
少しは大きくなったか?」


「お久しぶりです、高淤様」


くつくつと愉しげに笑う一人の女性
彼女が母と姉妹である、高淤加美神である

力が強く、水神として崇め奉られている


「御津羽にもついに子供が生まれるとはな…」


しみじみとそう呟く高淤加美神は、ぐいっと酒を煽る
それに闇御津羽神は、苦笑いを浮かべた


「高淤にもいつかは来るであろうが…」


「なに、どうか分からんぞ」


なにしろ俺はこんな性格だからな、と笑っていた
それに私も苦笑いを浮かべてしまった


「ところで宝華、体調が優れないと聞いていたが大丈夫なのか?
御津羽が心配していたぞ」


「あら高淤もでしょう?」


「ふっ、かわいい姪だからな」


そう告げられ、頬が赤く染まる
高淤様は、母様と違い男っぽいから、照れてしまう


「私は大丈夫です、ご心配をおかけして…」


「くくく、畏まらんでもいいぞ
にしてもお前は可愛いな
赤いぞ、顔が」


笑いながらそう言われ、またもや顔に熱が集まる
美形だし、こんなこと言われ慣れていないから



「高淤、あまり宝華を苛めるでない
ほれ宝華、」


母に手招きされたので、そのまま母の腕に飛び込んだ
久しぶりに感じる温もりに、私は頬を緩ませた
触れ合うだけで、こんなにも心が穏やかになる


「くくく、宝華もまだ子供だな」


「何を言うか、高淤
これはの、母娘の触れ合いなのじゃ」


頭上で交わされる言い合いに、私は首を竦めることしか出来ない
流石に母様と高淤様には、なにも言えない


「にしても御津羽が、こんなにも親馬鹿になるとはな…
思いもしなかったぞ」


ようやく言い合いは落ち着き、改めて高淤様がそう呟く
それに私は首を傾げた


(昔の母様は、どんな方だったのかしら?)


流石に生まれる前の母様のことは知らないから―――。そんな私の様子に気づいたのか、高淤様が愉しそうに笑い、口を開くのだった



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