時など意味をなさないこの空間でカナエは1人、存在していた


(今日もまた1人、新たな道を歩み出した)


一際輝く純白の扉は毎日のように開閉している


その度に世界で生と死があったのかと思うと、何とも言えない感覚に襲われる



そんな時だった


『なぁお嬢さん、』


ココで初めて、話しかけられた

そちらに目を向けると、1人の男がいた


『だれ?』


『お嬢さんは、行かないのかい?』


くい、と一際輝く扉を指差されたカナエは


『……貴方こそ』


ふい、と顔を反らした



『オレも行くぜ?ただ、ずっとお嬢さんがココにいるからよ』

気になってな…


人好きのする笑みを浮かべる男にカナエも笑っていた



『――貴方は怖く、ないの?』


『怖い?』


『あの扉を潜ったら、今の私は消えてしまう


私が私じゃなくなるなんて、』


久しぶりに人と話せたからか、随分と素直に話していた


『別に自分が消える訳じゃねぇだろ?ただ、新たな道を歩むってだけでよ

自分は自分だって事を、忘れなきゃ良いんじゃね?』


するりと心に染み込む

不思議だった、この男が


『……そう、かも』


私は私、ただそれだけ

今まで悩んできたものが解決し、心が明るくなる


『……ありがとう、教えてくれて』


『いいって!んじゃオレは行くぜ、先にな
ま、次の道で会えたらいいな』


そう告げると、男は颯爽と扉に向かった

私は男が扉に消えるのを、ただただ見つめるのだった








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