コンコン、とノックの音が暗い部屋に響き渡る
暗闇にいるのは、幼くなったユウナのみ
彼女はドアのほうに視線を向けた
「ユウナさん、ご飯が出来たよ
部屋に、入ってもいいだろうか?」
優しそうな、老人の声が聞こえた
彼は見るからに外国人なのに、とても流暢な日本語を操る
「はい、」
そこに驚きながら、ユウナは返事を返した
ガチャリと音が鳴り、暗闇に一筋の光が差した
「こんなに暗いままで……電気をつければよかったのに」
苦笑いを溢し、彼は告げた
「さぁ、ご飯にしよう。お母さんが美味しい料理を作って待っているよ」
手招きされ、私は素直に歩みを進めた
「…いいんですか?」
「いい、とはどういう意味だい?」
パチンと電気をつけた老人はそう聞き返す
「部屋とか、ご飯とか…
私なにも、かえせないから…」
ユウナの言葉に老人は息を呑んだ
なんということだ…
こんな幼い子供に、こんな言葉を言わせてしまうなんて…
「……そんなこと、気にしなくていいんだよ
私たちは、家族なのだから」
「…………でも、……」
なおも言いよどむユウナの頭を優しく撫でる
「今はまだ、家族と認識できないだろう
だが、遠慮などしなくてもいいのだよ?」
さぁ行こう、と促されたユウナはコクンと頷く
背中を老人に優しく押されながらユウナは歩き出すのだった