告白は、キミから(阿三)



「あ、べく!お、はよ!」

「おー三橋か、はよ」

えへへ、挨拶……しちゃった
あ、べく、優しい…から、挨拶かえして、くれる

満足した三橋はトコトコと教室に向かうのだった

後ろで阿部がどんな顔をしているかなんて気付かずに


「うし!片付け終わったら各自で帰れよ」

花井の言葉に各々で返事をする野球部

「みっはしー!」

「たじ、ま君!」

どん!と田島は三橋にタックルをかます

「おつかれ三橋!今日もナイスピッチだったぜ!」

「あ、ありがと!田島く、もスゴかった」

「お、マジで?」

「うん!」

きょう、の田島君はホントにスゴかった
思い出したからか、ニヘラと笑ってしまった

「なぁ三橋、お前さぁ阿部のこと好きなの?」

ドクン!
おれの心臓が嫌な音をたてた

「オレは三橋見てたら、そうなのかなぁーって思った
だから聞いてみた」

きっと、田島君の瞳のなかのおれは、キョドキョドしてて、冷や汗もだらだらなんだろうなぁ


「おい三橋!誰も責めてねぇから、ただ気になっただけでさ」


「そ、なんだ……た、田島く!おれって、わかりやすい?」

「ん?おー、三橋は割りとすぐ顔と態度にでるからなぁー」

ど、どうしよ!な、なら阿部君にも、バレてるかも……
おれが阿部君を、好きだって


「ど、どうしよ、田島君!」

「なにがー?」

焦るおれとは対称的に田島君はマイペースだっあ


「お、おれば阿部君のこと、好きって……阿部君にバレてたら、どうしよ」

あわあわしていると、田島君が笑った

「バレててもいーんじゃね?どーせ阿部も気付いてるだろーし!」

き、気付いてる!?どうしよ、阿部く、に嫌われる

そんな結論にいたり、涙が込み上げてくる

「三橋ー?」

田島君が顔を覗き込み、ぎょっとしている

「なっ!」

田島君に、迷惑かけたく、ないのに……涙が、とまんない!

「ご、ごめ田島君!」

ごしごしと涙をふき、笑顔を浮かべる
ちゃんと笑顔になってれば、いいけど

「わりぃ三橋!泣くなんて思ってなかったからさー」

「も、大丈夫!」

心の中は、ぐちゃぐちゃだけど、笑わなきゃ

「なぁ三橋、阿部にさ」

「三橋ー!!」

田島が三橋になにかを言おうとしたら、グランドの向こうから阿部の叫びが聞こえた

「おっ阿部じゃん!三橋呼んでるっぽくね」

「そ、だね」
話しているうちに、阿部はもう目の前に来ていた

「三橋、今日一緒に帰んね?話あんだけど」

ふ、2人で!?どうしよ…好きって阿部君にバレてるなら、気まずいよね

「三橋、聞いてっか?」

「は、はぃぃいいーー!」

「ま、帰りは待ってろよ
監督に呼ばれてっから、少し遅くなっから」

「う、うん」

阿部はそう言うと颯爽と去っていった


「みっはしー?」

「た、たじま君、どうしよ!阿部君が話って……」

「そーだな!よかったじゃん、一緒に帰れて

オレなんて花井と一緒に帰りたくても、家すぐそこだからさ…ちっくしょー!」

そっか……おれも阿部君と帰れないのは、ヤだな

「で、でも、すぐ家で遊べる!は、花井君を呼べば」

おれの言葉に、田島君は笑った


「それもそーだな!」

歩きながら話していたおかげか、部室はもう目の前だ

中にはもう花井しかいなかった

「お前らなにやってたんだ?
他のやつらはもう皆帰ったぜ」

「三橋と話してたんだ!ゲンミツに!」

花井に笑顔でそう返す田島は、本当に嬉しそうだ
対する花井も田島を見る目が優しさを帯びている

「そういえば阿部が、絶対待ってろよ!だと
すんげー形相だったな……」

花井が思い出したように告げる内容に、三橋は身体をびくつかせた

「……!」

「三橋……そんなびくつくなよな…」

「ち、ちがッ!」

慌てたおれは花井君に叫ぶが、すぐ次の言葉が出てこなかった


「今のは花井の言った内容にビビっただけだよなー」

田島が三橋の思いをよみ、花井に告げる

「にしても、今日の阿部はなんかおかしかったよな……」

「おかしかった……?」

「ああ、なんか集中出来てねぇかんじ」

もしかして、おれの…せい?お、おれが阿部く、のこと好きだから
阿部く、野球に集中、できないのかも

ど、どうしよ

色々考えるが、ぐるぐると渦巻くだけで、解決はしなかった


「へー、あの阿部がねー。やっぱり阿部も人間なんだな!」

「……お前は俺のこと、なんだと思ってたんだよ」

バシッと田島の頭をはたく阿部に全員が驚く


「阿部、お前いつ入ってきたんだよッ!?」

「んだよ、気付かなかったなんて花井もまだまだだな」

突っ込む花井を軽くあしらうと阿部は三橋を呼ぶ

「三橋、わりぃな待たせて
帰ろうぜ」

「う、は、はい……」

頭の中はぐるぐるで、頭が働かない

――三橋の記憶は朧気だった

気付いたら家の前に呆然と立ち尽くしていた
頭ではさっきまでの会話がリピートされていた

『なぁ、三橋は俺のことどう思ってんだ?』

『え?』

質問の意味が分からず、こてんと首を傾げる三橋を、阿部は楽しそうに見つめる

『三橋、俺のこと好きだろ?』

『!ち、ちがっ……おれ、阿部くのこと』

反射的に否定してしまった
今までの関係を壊したくないばかりに

『へぇ、んじゃなんで泣いてんの?』

『……!』

頬に手を伸ばす
指先に滴が触れ、自分が泣いていることを理解した


『ご、ごめ……なさい』

『なぁ三橋、よく聞いとけよ』

三橋の家はもう目の前だ
視界に我が家がうつり、三橋は安堵した

恐々と阿部を見上げる

……あ、わらってる……
かっこいい

『俺、三橋のこと好きだから
三橋もだろ?
だから、付き合おうぜ?』

『!』

びっくりしすぎて声が出ず、三橋を口をパクパクさせる

『これからよろしくな、廉』

チュッと額に口づけを落とすと、阿部は暗闇に消えた

「………!」

ようやくリピートが終わり、顔を真っ赤にさせ慌てふためく三橋

その時だった
玄関から母親が不思議そうな顔をして出てきたのは

「廉、なにやってるの?」

「な、な、なんでもない!」

三橋はそのまま自分の部屋に走っていった

顔には、とても幸せそうな笑顔が浮かんでいた






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