最後のエガオ(花田)




『花井ーッ!』

『はよっ!今日も晴れてよかったなぁー』

『はらへったー!花井なんかねぇの?』

『うあー、れんしゅーキツい!けど楽しい!』

『うへ、90点とかやっぱり頭いいのなー。うらやましー!』


いつでもどこでも、アイツは笑顔だった


『好きだぜー!』

『はないー、ちゅー』

『来年も一緒にいよーな!』

『大好きだぜ、花井っ!』


輝かんばかりのエガオが、好きだった
太陽みたいなアイツが、オレの目標だった

それなのに………

「なんで死んじまったんだよ、田島……!」


そう…太陽みたいなアイツは、死んだ
オレを置いて、逝った

事故、だった
酔っぱらいの車が、田島に突っ込んでの

田島の輝かしい未来も夢も、何もかもが消えた瞬間だった

かろうじて即死を免れた田島はすぐに病院に運ばれ、オレも駆けつけた
だけどそこに居たのは包帯が巻かれ、チューブやら何やらがついていた田島だった

笑顔なんかあるわけがなく、ただベッドに横たわっている悲しい姿だった

元気よくはしゃぐ姿も、大声で笑う笑顔も

あるわけがなかった

病室には涙を流す田島の両親と姉弟たちが、立ち尽くしていた

田島の家族は医者に呼ばれ、病室から居なくなった


「……なぁ、」

ピッピッと、機械から一定のリズムが聞こえる

「……なぁ、いつまで寝てんだよ」

どれだけ話しかけても、田島の瞼は閉じたままで

無性に、大声で泣きたくなった

「逝く、のか……?」

呟くことで、現実を理解した

田島はもう、帰ってこない
オレを置いて、逝ってしまう
オレの、手の届かないところへ

そう理解した途端、一筋の涙がオレの頬を伝った

「っ……!」

堪えきれない涙が、ぼろぼろこぼれ落ちる

いつもなら、田島が笑いながらそばに来る筈なのに

どーした花井?って、首を傾げながらもそばに来る筈なのに

「…田島……」

真っ白いベッドに、横たわったままだった

「……大好きだぜ、悠一郎
これからも、ずっと」

田島の手を握り、呟く
まだ暖かい手はいつもの田島と同じで、落ち着く

「……マジで、好きなんだよ
なのにオレを置いて逝くとか、ヒデェだろーが」

ぎゅうっと手を握り、田島の顔を窺う

「………ッ!」

田島の閉じられた瞳からは涙が零れ落ちていた
はらはらと、止めどなく溢れる涙が田島の頬を濡らす


「……お前にも、夢があったのにな。死にたくねぇ、よな」

あんなに輝いていた田島の未来が儚くも一瞬で消えた
誰よりも、田島自身が生きたいはずなのに

「……悠一郎、オレ―――」

田島の泣き顔を見つめ、呟く


「―――――、待ってろよ」

いつの間にか田島の涙は止まり、何だか笑っているように見えた

口角があがり嬉しそうに笑う田島の笑顔が、オレの最後に見たエガオだった







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