チャクラがあると分かった時点で、凜は自分の未来を何となくだが悟っていた
九尾の器にされた忍びの子である自分が、楽しく健やかに生きられるなんて考えてもいない

たとえ火影の実子であろうとも、悲しみや恨み、憎悪の感情はそう簡単には消えないだろう
それゆえ、私の未来は暗く暗澹としている
無事に生きられる保証もなく、私は未来に期待など持てないでいた


『王牙、そろそろかしら?』


『そうだな…
すでにお前は生まれて1年経っている

環境やらお前の事情やらを考えると、そろそろ自我が身体にも芽生えるだろう』


話に聞いてはいたが、この王牙との世界との別れはきつい
これから待っているであろう未来が、簡単に予想できるから


『まぁお前が忍として優秀になれば、すぐにでもここに来れる
それまでは、精々殺されぬよう頑張るんだな』

ニヤリ

王牙の笑みに凜は天を仰いだ


『ま、出来るだけ早くここに来るから
それまで王牙は1人で寂しく待ってなさい』


『ふん、言われるまでもないわ』


淡々と、そしてリズムよく交わされる会話を王牙は気に入っていた
最初はこんな餓鬼に封印され、しかもその餓鬼が封印した火影の実子ときた

流石の我も、なんともいえない感情に襲われた
あの火影は、まぁ嫌いではなかったしな

まっすぐな瞳は、そこらの人間と違い好感を持てた
だから、我はこの餓鬼に封印されてやったのだ

長い人生、こんなことでもなければ暇で暇で仕方がない
思いつきで封印されてやったが、それはそれで愉しい

器である餓鬼が、こんな人間だとは思ってもいなかった
封印された時には既に自我を持っていた餓鬼

有り得ない事態に驚きはしたが、暇つぶしにはなるかと笑みを浮かべたのを覚えている


『王牙、なに笑ってるのよ
気持ち悪いわよ?頭でも可笑しくなったのかしら?』

『ふん、』


王牙はそれには答えず、告げた


『そろそろ、だな』


『え、?』

意味が分からなかったのか、凜が口を開いた瞬間

目の前にいた少女が、消え始めていた

驚きに目を見開いた少女が消えゆく中、王牙は何も言わずふっと消えた

この暗闇の世界では、自分の意志でこのようなことが出来るのだ


それに気付いた凜だったが、少し経てば会えるのだと自分に言い聞かせ、この不思議な事態に身を委ねるのだった








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