狐さんに王牙と名付けてから、刻々と時は流れた
王牙と私は嫌みを言い合いながらも、絆を深めていた
そんな私に王牙は嫌々ながらも世界の話をしてくれた
ここは私の精神世界
そして私の体に自我が芽生えた時、私は目覚める
それまでは、この世界で生きなければならない
しかし、時はもう少ない
私は、もう少しで新たな世界を生きることになる
(ということは、やっぱり子供の姿なのね……)
死んだ記憶もないのに、新たな世界で生き抜かなければならないなんて
溜め息しか出ない
『……ねぇ王牙、私に自我が芽生えたら、もうここには来れないのかしら?』
『否。しかし、自我が芽生えた時、お前は恐らくその姿の年齢だ
……来るだけで一苦労だぞ』
『でも、来れるのね?
よかった、来れないと言われたら何をするか分からなかったわ』
にこやかに笑いながらそう告げる凜に、王牙は息をついた
『……ねぇ王牙。あなたは、ずっとここにいるの?
―――この世界からは、出られないの?』
凜の不安げな声が響き渡る
『私、これでも王牙が大切なのよ?それなのに……』
『……我がここにいる理由を、話してやろう』
王牙の言葉を聞き、凜はハッとした
今まで王牙がいる理由が分からなかったから
ここは私の精神世界なのに…
凜は、語りだした王牙の話に耳を傾けるのだった
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