ふと気が付くとそこは一面の暗黒だった

上も下も分からない、自分がそこに存在するのかも分からないような世界

音も光も何もなく、ただただ私だけが存在していた


だがいつからか私だけの世界に、1つのモノが存在を現した


『ねぇ、狐さん……?』


『――騒がしい人間だ』


『だって暇なんだもん
ここには、私と狐さんの2人だけしかいないし……』


そう、ここには私と狐さんの2人だけ

他に存在するものは、何もない

『2人だけしか存在しないんだから、仲良くしましょう?

狐さんの名前は?いい加減教えて欲しいのだけれど』


『なぜ人間などに教えねばならぬのだ』


恐ろしく低い声音の言葉に凜は笑って言った


『怖くないわよ、狐さん

それに名前を教えてくれないなら、教えてくれるまで粘るだけ』


そう楽しげに話す凜に狐さんと呼ばれる存在は、恐ろしい唸り声をあげた

その唸り声に凜は一瞬目を見開くと、カラカラと笑った


『威嚇する元気があるならまだ大丈夫ね
狐さんの声は大人の声だから、心配してたの

こんな暗闇の世界で体調を崩さないかしら?って』


『馬鹿な人間だ
この世界では体調などというものは存在しない

存在するのは我と人間、という存在そのものだけだ』


『あら、そうなの?知らなかったわ』


ふふふ、と微笑み話す凜に狐さんと呼ばれる存在は溜め息をついた


(…この人間は、楽しんでいる
この世界を、そしてこの我をも)

急に黙った狐さんに凜は不思議に思いながらも、話しかける


『ねえ狐さん?私、やっぱり暇なのよ
それに疑問も山ほどあるの』


聞いてもいいかしら?と尋ねる人間に狐はククッと笑った

凜は気にする事なく言葉を紡ぐ


『まずは何故、私がこんな小さくなっているのかしら?』


そう、現在の彼女の姿はまさに5歳児

本当の年齢を大きく下回っているのだ


『我の知ったことか』


『あら酷い…こんないたいけな少女が訊ねているというのに』


『人間よ、お主のどこがいたいけなのだ?
少しは黙っておれ』


『い・や』


凜は狐さんの言葉に、はっきりと拒絶の言葉を紡ぐのだった






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