楓は焦った


「っ図々しい事言ってごめん!勝手に想像して言っちゃった…

さ、プリントやろ?」


「……ああ、」


それからは一言も会話をせずにプリントに取り組んだ

赤也に話し掛けようと頑張った楓#だったが、先程の図々しい発言等があり勇気がでず話し掛ける事が出来なかった


対する赤也は先程の楓の発言を深く考えていた


大切にされてる、か……
んな事、他人(ひと)に言われたのあったっけ?

てか普通に楓と会話できてるってスゴくね?

どいつもこいつも“テニス部レギュラー”の肩書きでしかオレを見ねぇから、ついつい

テニスは楽しいから好きだし、まぁ先輩も好きだ
たまーにムカつくけど……特に仁王先輩とか丸井先輩とか

――楓はなんか普通、なんだよな多分
だからオレも楓には普通に接してるのか


うわ、んな事考えてキモッ!恋する乙女かよオレはっ!?仁王先輩あたりにバレたら……


プリントをやるはずだが脳内が一杯で全く進まない

が一応手は動かし、好きな数字をカリカリと書いていく

テストなんかどうでもいい様子だ
いや赤也の事だから今はテストの事を忘れているのも有り得るだろう


そのまま時間は刻々と過ぎていった

プリントの山もすでに残り数枚となり、時計に目をやると5時を指していた

始まったのが3時半位だったので2時間半は2人きりだったのだ

楓は一緒にいられる時間がもう少ないという事で、赤也に頑張って話し掛けようとしていたが無理だった


結局はそのまま最後のプリントに手を伸ばしていた

カリカリと答えを書いていく楓はすぐにプリントを完成させた

さすがに終わったのに無言は厳しいので呟くように言った


「切原君、終わったからもう帰ろう」


筆箱やらをカバンに片付けながらそう言う

が、赤也は気づかなかった

仕方なくもう一度言った


「切原君!終わったから帰ってもいいよっ!」


「うおっ!?あぁ、プリント終わったもんな」


ビクッと身体を揺らした赤也は慌ててそう言うと筆箱を片付ける
「プリントは私が先生の所に持ってくから
切原君は部活に行ってね」


カバンを肩にかけプリントを両手に持つ楓を見た赤也は呟くように言った


「あ、さんきゅ」


さっきの発言で気まずかった楓は早口で言った


「気にしなくて良いから!それじゃあテスト頑張ろうね」


赤也が返事を言おうと口を開いたが教室に楓の姿はなかった
言ったと同時に教室から走って出て行ったのだ

それを呆然と見つめる赤也の意識が戻ったのはそれから五分後


「ヤベ、真田ふくぶちょーに怒鳴られるっ!」


先程までの言葉を忘れて赤也はテニスコートに走るのだった






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