人間を愛している新宿の情報屋、折原臨也。

彼は私の彼氏である。

全ての人間を愛している彼が、1人の人間を愛する事が可能な訳が、あるわけがない。

そんな彼が私の彼氏になったのは、彼の一言からだ。


『おめでとう、キミは人間の代表に選ばれた人間だ!だから俺はキミに全ての人間分の愛を捧げよう。だからキミは、俺に全ての人間分の愛をそそいでよ』


いきなりそんな事を言われてしまうと、唖然とするしかない。

人が多い池袋でいきなりそんな事を言われたから、私はただ突っ立ってる事しか出来なかった。頭の中は真っ白。

周りの視線が少し痛い…

しかし、断る言葉も思い浮かばす、私と彼は初対面にして付き合うはめになった。

そしてついに1ヶ月くらい…


「臨也さん、そろそろ私もバイト始めたい時期なんですけどー」

「バイト?そんなのしなくて良いよ。名前ちゃんの生活費も何もかも俺が払うよ。だからそんな事を気にしなくって良いんだよ」

「勝手な事言わないで下さい、私の人生は私が決める。いきなりそんな事言われても困る」

「確かに名前ちゃんの人生は名前ちゃんのだけど、これからは俺の人生でもあるんだ。だから、キミのお金の負担は全部俺が背負う。負担って言う負担じゃないんだけどね

あぁ、ついでに言うと、名前ちゃんの部屋も近日空くから簡単な荷物を持ってきておいで。大きな荷物は運ばせるから」


…………ぇ?

この人は一体何なんですか。

私をどうしようって言うのですか? 大体私貴方と付き合ってる事、まだ親に伝えてないんだけど…


「安心して、名前ちゃんの両親にはちゃんと顔を合わせて挨拶したよ。「頼もしい方だね、名前をよろしく」って言ってた」


あんの野郎何見た目に騙されてるんだよ。

コイツもコイツで何を……


「キミは世界に1人にしかいない人間代表なんだ。キミは俺に全ての愛を、俺はキミに全ての愛を捧げあう。人間全員を愛するにはキミの存在が不可欠なんだよ」


そう言ってソファーに座っている私の頬を包み込みキスをした。

離れて見えた赤い瞳は吸い込まれそうなほど綺麗で、例えるならば宝石のルビー。


「俺はキミを通して人間にこの愛を伝える。だから、キミも全てを俺に伝えてよ」


そう言って優しく包み込む彼はセコい。

今までの嫌な気持ちがすっとぶ、そんな時間を挟んでしまう。すっとぶのがわかっててなのか、彼はたまにこの時間を与える…

だからかもしれない。「全ての人間の代表」というわけわからない非現実な肩書きを背負わされても、耐えられるのは。

だからかもしれない。彼と付き合えっていられるのは。

私は彼に知らず知らず惹かれていたのだと。




「臨也さん、愛してる」




偽りの肩書きを利用する。

私のこの感情が、全ての人間の感情だと思って、私を愛して。だなんて声に出せない。

あ、今気付いた、

私…、こんなに臨也さんに惹かれてたんだ…。










ちょっと変わった等価交換

(彼は求めた、「彼女」を。しかし、彼は思ったこの感情は「人間」を愛する感情と似ている。そして彼は考えた「彼女」は「人間」の「代表」なのだと。)
(そして彼は人間を愛しながら、彼女個人に愛を捧げる事に成功した)

(H`22/07/30)