夢は夢でしかないのとおんなじで、星は星でしかなくて、私も私でしかない。
私としての記憶がある限り、私は私としてしか生きられない。


「タクト君はさ、自分が自分でしかない事に潰れそうになることってない?」

「え?突然何を言うのさ」


タクト君は苦笑いをして私をみた。私はよく私に潰されそうになる。
楽しそうに笑う周りをみていると、わたしはその楽しそうな空間を壊したくなくて、ココロからの言葉も出せずココロからの相談もできない。相談する事でその人のココロが痛むかもしれない。迷惑かかるかも…なんて考えていると気づけば私は周りにココロを開いていない人間へとなっていた。


「ない…といったら嘘になるかな」


空を見上げながら言う彼は真剣な表情だった。
彼の言葉の合間に声を発する事がいやになって、私は黙って彼をみつめた。


「僕は自分に使命をあたえた。でも、たまにだけどその使命から逃げたくなる時があるんだ。そんな時は学校行きたくないし篭りたくもなる。それでも僕は立って歩いてココにいる。」


どうしてだろう。タクト君は笑っていた。


「僕は使命を成し遂げる。成し遂げなきゃいけないんだ。戦い続けて僕は成長する気がして…それでね、僕は―――」

「え…」



僕はキミの居場所になれるくらいココロの広い男になりたいんだ。

タクト君の言葉に私の閉じていた唇は自然と開いていた。私の居場所?え?タクト君が居場所に…?


「名前のココロの中の闇を僕が振り払って、名前が自然の笑顔を出せるようにしてあげる。だから僕は成長し続けるんだって自分で決めたんだ」


言い終わって私を見たタクト君は一瞬で驚きの顔をみせた。わたしが泣いていたから。
周りの人たちはココまでわからないと思っていた。わかっていても言わないんだと思っていた。でも、たった1人でも私のココロに触れてくれる人がいるんだって思うと、私は泣いていた。

おどおどしながらタクト君は私の頭を撫でながら抱きしめてくれた。


「ねぇタクト君―」

「ん?」

「あなた、魔法使い?」

「名前だけの魔法使い…かもね」

「ふふ、ありがとう」





私の魔法使い

(魔法使い兼王子様になるのは遠い未来じゃないって信じてる)


H'22/XX/XX