あのホテルしかねえなあ、という声に、ああそうだな、とおざなりに頷く。射線を通す方法ばかりを探している。だけどこんな開けているだけの場所に標的が出てくることなんてないしあんたはつまらないと言って撃たないだろう、撃ったら撃ったでこんどはメテオラを食らってホテルごと潰されて、脱出できたとしてもこんどは高度が取れなくなる、ああそう考えるとあんたにとって悪くはない遊びなのかな。
 そんなことばかり考えている。あんたは射的が好きなだけの子供のようで、俺はあんたの趣味のことばかり考えているとんでもない阿呆だった。見えるものはホテルだけの、だだっ広いだけの海岸線が、どこまでも広がるなかを歩いている。知らない街で終電を逃したあとだった。
 ぴんと糸を張るように射線を通す、その同じ手つきで手をつないでいた。ぴんと糸を張られたから撃った。それだけの理由のように、わかちがたい近さで手をつないでいた。
「あのホテルに泊まろうか」
 そう言う。当真は返事をしなかった。透が、となりを歩く相手を見ないようにそっぽを向いていると、突然手がひっぱられた。ぐい、と引きずられて、転んだ。
 当真は砂浜に寝転がって、にやにやと透を見ていた。当真の上に落下した透は「当真さんあんたは」と声を荒らげかけ、しかしその声は、当真の「いいからここで寝ちまおうぜ」という声に遮られて、透はふと体の力を抜いた。
 転落した。
 当真の上に転落して、体に身をうずめて、息をついた。
「布団がわりにすんなよ」
「違うのか」
「違うだろ」
「似たようなものだろう。……ずっと」
 ふ、と透は笑った。身をおこした。そこに当真の目がある。額に手のひらを置く。身を屈める。どこでもいい。同じことだった。
 射線が通っている。


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