なんでボーダーなんかにいるのかわからない。歌川は士郎の知る限りなんでもできる。頭は悪くないし士郎とは違って筋肉バカっぽいところがあってつまり運動神経もよくてそして性格もよくてというか性格が良すぎる、良すぎるといったらいいみたいだけど神経が細かすぎていつもまわりのことを気にしてフォローしていておまえほんとうにばかだねえと士郎は言い聞かせてやりたくなる。言い聞かせてやりたくなるのだけれどとにかく歌川は士郎の同僚である。士郎にとっては唯一無二の同僚であり、士郎のたいせつな風間蒼也が選んだ男であり、だからそれで十分なのだけれど時々、歌川が別の仕事を選んでいたらもっと歌川にとっては安息があったのではないかと思うことがある。戦ったり殺し合ったりを目にすることのない、堅い仕事を目指して勉強してそういう仕事について、ごくごくまじめに堅実な人生を歩んだほうがよほど、歌川のためには良いことだったのではないのか。
 そんなことを士郎が気にする必要もないのだけれど。
 その話の全貌は伝えなかったが、部分的に士郎がだらだらとしゃべっている、カツカレーをもぐもぐと食べている風間蒼也は聞いているんだか聞いていないんだかわからないが、たいはん聞き流しているとしても必要十分に聞いてくれていることは知っていたからそれでよかった。風間は士郎の言葉をなげやりに扱わない。士郎がどんな鬱陶しい絡み方をしても、風間はきちんとそれに対して正面から向き合ってくれる。
「つまりようするに、肝が小さいから心配してるんだよ」
「そうだな。その傾向はある」
「だよね」
 士郎はべつにカレーなんて好きでもなんでもないのだけれど風間がカレーを好きだと知っているから食事をとるときはカレー屋を選ぶのが先輩に対する尊重だろうと思ってカレーをとって食べているのだけれど半分も食べきることができないし、そもそもこのカレー失敗した、遠くでトマトの味がする。
「風間さんこれ食べてよ」
 そう言うと、カツカレーを迅速に食べ終わった風間は手のひらを差し出し、風間と士郎は皿を交換する。士郎が全部食べてしまったみたいになったので気分がよくなった。風間はカツの載っていないカレーをあいかわらず迅速なペースで食べながら、
「しかし歌川は鈍感なところがあるからな」
 と言った。
「鈍感なところがあるからあの性格でもやっていけるんだろう。おまえとは良いコンビだ」
 そうだねと士郎はいつになく素直な声で言った。カレーの皿も空だったしもうひとさらも空になる。そうだねそうだよね、ぼくがついてるからね。


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