だってきっと諏訪隊はこれから何十年も諏訪隊のままでこれから何十年も諏訪は大地の傍らにいるというのにこんなのはあんまりにもひどい話で間違ったことなんじゃないのかとしかし大地は口には出さずたとえば彼がいまスーパーマーケットにいて諏訪はとなりにいて肉の物色をしている。あまりにも間違ったことであるとしか思えないが日佐人も瑠衣も抜きで彼らはこれからたぶん肉を食うし肉を食う(比喩)。大地は、諏訪の食べ物の趣味が自分と全く一致していないことにすら言いがかりをつけたくてたまらなかった。他人だということがはっきりしてしまう。他人だということがはっきりしてしまうと、嫌いになる余地が見つけられなくなるのでよって大地はいっそのこと諏訪さん嫌いですと言いたかった。言いたかったのだがかわりに、「さすがにその肉高いですよ」と言った。
「おごりだろ」
「なんでですか。そもそも、なんで俺のおごりだと高くていいんですか」
「じゃあ俺のおごりならいいっての?」
「そりゃそうですよ。そもそもほとんど諏訪さんが食べるんじゃないですか」
「ワリカンで」
「ワリカンならこっちで」
「ワリカンなら高くてもいいんじゃねーの」
「なんで高い肉にこだわるんですか」
 言った一瞬後、ほとんどタイムラグなしに大地は理解した。理解して死にたくなった。いきなり頭に血が上った。諏訪が目を細めたのがわかった。大地はすべてを理解して二の句が継げなくなった。つまり。
 つまりこの男はうかれているのだ!!
「すいません分かりました俺が悪かったです買いましょう俺のおごりでいいです」
「は?」
「いいです!」
 今の目つきはまったくひどい、ひどかった、ひどいとしか言いようがなかったので大地は肉のパックをひっつかみそれから諏訪の好きなキンキン頭が痛くなるばかりのクリアな味のビールの六本パックをつかんでレジを抜けた。
 諏訪は目を細めてあいかわらず大地を見ていたので、スーパーマーケットを出たところで大地はおもむろに爆発した。
「俺を好きみたいなツラをするのはやめてください!」
「は?」
「俺たちはあと何十年一緒にいることになると思ってるんですか」
 何を言っているのかよくわかっていなかったが伝えるべきことを伝えなくてはならないという意識だけがあり大地はそう言った。諏訪は口をぽかんとあけ、それから、一度閉じて、また開けて、「頭に血がのぼった」という、顔を、した。憤怒とほとんど同じでけれど憤怒そのものではなかったので大地はまた死にたくなった。
「なん、じゅうねん、の、つもりなんだよ」
「……何十年もですよ」
「なんで?」
「なんでもなにも、……隊じゃないですか」
「あのなあ」
 あのなあ。そう諏訪は言い、ほとんど憤怒に近い表情を浮かべたまま腕をもちあげて頭をぐしゃぐしゃとかき回し、「あー!!!」とでかい声を出したあとで、大地の腕をつかんだ。大地は頭がショートしたのがわかった。バーン!
「もういい帰るぞ」
「あの」
「帰る! 肉!」
 腕を引きずってずかずかと大股で歩いていく諏訪の背中が、大地を好きだと行っているので大地は腹が立っているのだがそれ以前に、大地は諏訪と手をつないでいるので、これは手をつないでいる範疇なので、これはその範疇なのでそうに違いないので、そしてそれははじめてのことなので、小学生か、大地は、諏訪と、手をつないで、街を、歩いているので、もうなにを考えることもできず、ただ、肉を食う(比喩)ことについてぎっしりと塗りつぶされた脳を抱えて粛々と、諏訪のうしろに、従った。
 たぶん大地も全身で、諏訪が好きだと言っている。


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