なにがどう転んだって、奈良坂透が勇に勝てる日は一生絶対来ないのだから、それでよかった。好きにするだけだった。どれにしようかなと悩んで、「必勝祈願」というやつのなかから、いちばん可愛いピンク色のを選んだ。女児向けっぽい、花柄のやつ。いちばんそれが似合うと思ったのでそうして、たぶん、嫌がるだろうなあと思った。思って勇はひひひと笑った。巫女が不審げに勇を見ている。
 手を叩いてお祈りをしたのはそのあとのことだったのだけれど、そうしたのは、そのほうがお守りに効力が入る気がしたからだった。けれど祈ったことはぜんぶウソだった。奈良坂透が元気に毎日すこやかに暮らせますようにとか、奈良坂透が仲間と上手く仲良くやれますようにとか、奈良坂透の射撃の腕がもっと上がっていまよりマシになりますようにとか、そんなことを勇が心から祈るわけがなかったのでそれはぜんぶウソだった。思いつく限りの嘘を並べ上げたあとで勇は、そうだ、と思って、ひとつだけ本当のことを祈った。
 勇の無限に連なる嘘とひとつだけの本当が詰め込まれた必勝祈願の梅の花を、19歳の誕生日に、贈る。


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