「みわくん」
 ときどき寂しい時に、勝手に口がそう言っている。みわくん、陽介がそう呼ぶとき秀次は、そこにこめられてしまっている感情に気づいているのだろうか。
「もういうこときいてやんねーぞ」
 笑いながら言った。
 食事をとらないと言ったから、そう言い返した。食堂で夕食を摂ろうと言ったら俺は先に寮に帰るとぬかしやがったので、そういった。べつに止める筋合いではなかった。一食くらい食わなくても死にゃしない。ひとりにされて寂しいわけでもない。だれか見つけて一緒に食えればいい、奈良坂や古寺もいるかもしれない。
 でも言った。みわくん、と呼んだ。
 そしてたぶん秀次は、みわくん、と呼ぶときの、陽介の声の寂しさに気づいていた。ぎゅっと顔をしかめた秀次が、ゆるりと諦めたような顔をした。そうして陽介の肩に、肩を並べた。
 なんだかくり返し、こんなことばかりやっているような気がして、陽介は少し脱力する。三輪秀次が俺のものだなんてべつにおもってやしないし、三輪秀次のほうだって陽介が秀次のものなんかじゃないことは知っているだろうに、どうして運命のパートナーみたいなツラをして、甘え合ってしまうのだろう、そう思いながら、陽介は照れ隠しのように、伸びをした。
「俺W丼取るから秀次それ手伝ってよ」
「一人で食えるだけ買え」
「食わせてやるからありがたく思えって言ってんの」
 それだけの話。


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