触らせろよ、と当真がいうので、いやだ、と言ったはずなのに触られている。指がいっぽん、にほん、増えていくゆっくりとした拷問のような時間を、透はひたすらに、素数を数えることで耐えている。けれど数字がもうよくわからなくなっていて、限界が近かった。あまりにもゆっくりとゆっくりと気長に、当真は透を抱いた。
こいつ限界ないのか、と透は思う。俺がこんなふうに腰をつきあげてぶざまなまねをしているというのに当真が興奮のひとつもしていないというならだた無様なだけで、なんのためにこんなことをしているのかわからないではないかと思いながら、しかし結局やらせてしまっているのだし、今更もうやめろとも言い出しかねた。さらにいえば、早くいれろというのも絶対にいやで、結局透は黙って当真の指を待ち構えているしかないのだった。
ふだんは透は自分で自分のそこを慣らしている。当真のものを勃たせるのも透で、当真の上で腰を振るのも透で、すべては透の手中にあった。そのことを透はたのしんでいたし、そうであるべきだと思っていた。そして当真はあくまでも無邪気な被害者のように透を上に乗せてオーディエンスの視線で見上げていた。
のに。
「っく、」
指が増えた。ぬちぬちと揺さぶるようになかを広げられて、空気が入ってくる感覚があった。喉の奥で呻き、ああ本当に、と透は思う。いいかげんにしてくれないだろうか。あんたには限界はないのか。はやく入れたいとは思わないのか。もういい。俺のそこはそんなふうに丁寧にほぐす必要はない。慣れきってるんだ。あんたのものに最適化されているんだ。どうせもう入る。入れられたらすぐに射精するほどにもうすぐに入るから早くしてくれ当真さん早く、
「なんか考えてるだろ」
する、と背中をなで上げられ、声にならない悲鳴が漏れた。びくびくびく、とからだが震え、透は、自身が射精していることに気づいた。背中で?
「背中で?」
当真が、くっ、くっ、くっ、と低い声で笑い、「おまえ本当、おもしれーな」と言った。
「とう、ま、さん」
「おう」
「もう」
限界だった。透が限界だった。広がりきったそこが足りない足りないと悲鳴をあげている。当真のものを食い散らかしたくてたまらない。そのための器官だ。はやく。
「さっさと挿れろ!」
「うるせーよ」
「あ」
お望み通りに。
小さく囁いた声をかき消すだけのうるさい、俺はまったく、なんてうるさいんだろう、遠くで透は、そう考えている。