これから
『ただいまー!!ってあれ…??みんなどうしたの??』
学校から帰ってくると、昨日あんなに明るかった空気が嘘であったかのようにリビングは重い空気になっていた。
下宿始めた3人も暗くなってたけど、私が帰ってくればちゃんと挨拶してくれた。
けど、それからは沈黙が続き訳のわからない私は突っ立ったまま動けなかった。
すると草平が立ち上がって一言言えば家を出ていった。
その様子を見守ってたおばさんとおじさんは困った顔をしてじっと階段を見つめる。
私はそれで実紅が二階にいるのだと思い、階段を上がって実紅の部屋に向かった。
コンコンッ
『実紅…入っていい??』
実「緋菜…??どうぞ。」
実紅からの返事を聞けば部屋の扉を開く。
そこにはベッドの上でクッションを抱き体育座りをしていた実紅がいた。
『何かあった…??』
実「………。」
『………実紅』
実「実はね…」
話し始めた実紅から聞いたのは、草平に自分のコップを使われ、清佳サンに取って置いたアイスを食べられ、タッキーサンにはおばあちゃんからもらったお気に入りの風鈴を壊されたみたい…。
それは確かに落ち込むよな…って思った。
けど、実紅から聞くとそれだけではなく、皆に酷いことを言ったことを気にしてるみたい。
『ちゃんと謝れば大丈夫。許してくれるよ??』
実「うん…そうだよね。」
『落ち着いたらでいいよ。私は先に下行ってるからさ。』
実「ありがとう緋菜…」
私は立ち上がり実紅の部屋から出ていく。
最後扉を閉める時、実紅に目を向けると顔を伏せていてそうとう悩んでるんだとわかった。
けど、実紅の中では自分がすべきことがわかってたみたいだし、そっとしておくことにした。
私は下に降りれば少し遅い夕食を済ましてその後ゆっくりお風呂に入った。
それからはしばらくリビングでテレビを見てのんびりする。
チリンチリン…
草「はぁ…はぁ…」
『草平…これは??』
草「ちょっと家から持ってきた…はぁ…。」
綺麗な音が聞こえて、そちらに目を向ければそこには風鈴を持った草平。
きっと実紅が悲しんでるのを見て、わざわざ遠い実家から持ってきてくれたんだろう。
顔も良くて、こんなに人に気をつかえる草平が人気ナンバーワンだって納得。
草平は風鈴をつけると、疲れたのか縁側に寝転がった。
私が草平の側に行こうとしたらちょうど実紅が二階から降りてきたので、私はその場からそっと離れて部屋に戻った。
翌朝。
縁側に立っていると、実紅がお父さんと庭で話しているのをみつけて顔が綻んだ。
きっとちゃんと謝ったんだろうなって思ったから。
実紅がお父さんとの話が終わり戻ってきていたので、私はそれと同時に実紅の方に向かった。
「すいませーん。」
実「はい!!」
ちょうど玄関から出ると誰かが呼ぶ声がして、実紅が返事をしていた。
そこに居たのは昨日健が見惚れてた可愛い小澤サンで…
私はつい大きな声で名前を呼んでしまった。
小澤サンはビックリしてたけど、優しく微笑んでくれて私たちに尋ねた。
み「あの…草チャンいますか??」
実「草…チャン…??」
草「みゆき!!」
み「迎えに来ちゃった♪」
草「あっ実紅と緋菜に紹介するよ。小澤みゆき、俺の彼女!!」
二階のベランダに出てきて話している草平。
まさかのイケメンには可愛い彼女がいて、お似合いカップルだな…なんて心の中でニヤニヤしてた。
だから私は実紅の顔がひきつってることに気付かなかった。
これから
(そういえば健失恋だ(笑))
(あの…緋菜。
昨日運命の人見つけたんだ。)
(えぇ!?いつの間に!!)
(実はね…)
(えっ…)
20120929
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