それってつまり・・・そういう事?


「ありがと。アレン」

「いえいえ。またいつでも声をかけて下さいね」


ニコニコと部屋の前で二人して笑顔を浮かべている光景が視界に入った。

時刻は既に夕方を通り越して夜。
二人で何をしているのだろう興味本位…といよりも、もっと別な気持ちに突き動かされて
動けなくなっていると、アレンが持っていた荷物をイヴへと手渡していた。

どうやら元々イヴの荷物をアレンが持っていたらしい。


「それじゃ」

「うん、またね」


アレンから言葉をかけたかと思えばクルリと背を向け歩きだしていて。
見送った後にイヴもまた自室へと入ろうとした・・・所で。


「随分仲いいんさね」


そう、思わず声をかけてしまった。


「・・・ラビ?」


暗闇の中から出てきた事で一瞬誰だか分からなかったのか、
俺の名前を告げるまでに暫し間があったけど。

それでも俺だと分かると安心したかのように、ホッと小さな声が聞こえてきた。


「ビックリした、何時からそこにいたの?」

「さっきから」


丁度書庫に本を返しに行っていた所だと言葉を繋げつつ、チラリと瞳をイヴの手元へと向ける。

まだ真新しい袋からすると買い物帰りなのかもしれない。


「・・・アレンとデートでもしてたんさ?」

「へ?」


考えてた事を口にしてしまえばイヴから驚いたような、素っ頓狂な声が聞こえてきた。

普段任務ばかりで買い物なんてろくに出来ないから、偶の休みぐらい羽を伸ばしたいのも分かる。
まして俺とイヴは恋人同士という訳でもないのだから、
プライベートに首を突っ込む事がよくない事も。


「・・・こんな時間まで仲が言い事で」

「ラビ?」


けど…好きな女が他の男と買い物(デート)してたとなると少なからず反応はしてしまうし、
不安や苛立ちだって感じてしまう。

それがあまりにも一方的で。
彼女にとって理不尽以外の何もでもないと分かっていても。


「なんか、怒ってる?」

「何で? 怒るような事に心当たりでもあるんさ?」


俺の声に棘がある事に気付いたのか。
困ったように顔を顰めつつ「そういうわけじゃないけど…」と言葉を返すイヴ。


――何やってんだろ、俺。
勝手にアレンに嫉妬して、その怒りをイヴへとぶつけている。

…これじゃ女性の扱いすら分からない子供(ガキ)と一緒だ。
好きだからって自分の気持ちをぶつけるだけじゃダメだって分かってるのに。


「…イヴ、わ「本当は今度渡そうと思ったんだけど」


少しだけ頭を冷やしてイヴに謝ろうと声をかけるものの。
俺より早くイヴが言葉を言い切ってはもっていた荷物の中へと手を入れる。


「これ、ラビに」

「・・・本?」


取り出したのは何所か古めかしい一冊の本。
どうやら古書であるらしく、差し出されたソレを受け取りながら軽く中身を捲っていく。


「この間任務で行った時に見かけてさ。ラビそういうの好きでしょ?」

「え…じゃあ、これを買いに?」

「まぁ非番っていっても特にやる事もなかったし」


ちょっと値は張ったけど、出世払いでいいから。とクスクスと笑うイヴに、
手に持った本へと視線を落したまま暫し言葉を失う。

この本を買いに行ってたって事は、折角の非番丸一日を俺の為に使ってくれたって事…だよな?

なのに勝手に勘違いして、更に嫉妬までして…。


「…あー、マジカッコワル!」

「お? どったの?」


本を抱えたままその場へとしゃがみこむ俺に、頭上からイヴの驚いた声が聞こえてくる。
やべ、恥かしすぎて顔見れねぇさ…。

あー、でも俺の為に買いに行ってくれたのは嬉しいけど
アレンと一緒だった事を考えると素直に喜べないっていうか、なんというか。


「アレンとは教団に帰って来た時に会って、ここまで荷物を運んでくれただけだよ?」


え、マジ? ・・・って。


「俺声に出してた!? 何所から?」

「あー、マジカッコワル! の所から」


そう笑いながら返答するイヴも俺と同じようにその場にしゃがみこんでいて。
俯いていた顔を上げたと同時に近くにあったイヴの顔にドキリと心臓が大きく高鳴った。

声に出していた事にも当然驚いたけど、
それよりもイヴの顔が近くにあった事の方がもっと驚いたのは秘密にしておこう。


「とりあえずここじゃなんだし、部屋…入ってく?」

「へぁっ!?」


ああ…秘密にしようとした矢先にばれちまったさ…。

でもこんな時間に部屋に誘うっていうのは普通友達じゃありえないだろうし。
大体アレンにはそんな事言ってなかったのだから、少なからず意識してしまうのも無理はない
・・・と思う。


「い、いいんさ?」


だから声が震えてたって、きっと無理はない…んだと思う。
(我ながら情けないさ…!)


「ラビが嫌っていうなら引き止めないけど?」

「嫌な訳なんて全然ないさ! 逆にスッゲー嬉しい…けど、なんつーかこんな時間だし、その…」


思わず「期待してもいいんさ?」とまで言葉にしてしまっては、自分の顔に熱が篭っていくのが分かる。

うあ…俺ってこんなに純情だったんか…!?



「それを踏まえた上で、入ってもいいよっていったら・・・どうする?」



そう聞き返してきたイヴもまた、俺と同じくらいに顔を赤く染めていた。




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