ぜっっったいに信じないっ!!





それは今から遡る事5分と55秒前。

「――はい?」

ごめんなさい、わんもあぷりーず。と言葉を繋げれば。

「お主が好きだ」

ニコニコ…もとい、ニヤニヤとした笑みを浮かべながらサラリと凄い事を言われました。

あれー? もしかして私夢で見てるのかな?
うん、きっとそうだ。そうに違いない。早く目を覚まそう。


「だから退いてください」

「返事がまだだぞ?」

「人のベッドに勝手に侵入した挙句に返事を要求しないでください」


貴方には常識というものがないんですか。
・・・あ。あったらベッドになんか侵入しませんね、そうですね。


「返事は?」

「ノーセンキューです。それくらい脳を読み取れるんだから余裕でしょうて」

「心外だのう、ワタシにだって人のプライバシーを守る常識ぐらいはあるぞ」

「プライバシー守る常識だけですか。そっちの常識持つ前にベッドに侵入しない常識を持て」


寧ろ常識というより理性を持てと言った方が正しいのだろうか。
いやそれはそれで「頭脳派のワタシに理性が無い訳はないだろう?」とかほざきそうだし。


「よく分かっているではないか」

「人の脳読んでんじゃねーですか。プライバシーは何所行った。寧ろ常識を呼び戻せ」

「まぁ落ち着いて話し合おうではないか」

「ならまずアンタがベッドから下りろ」


そんな我が物顔でベッドに横になりつつ言われても説得力の欠片もねーですよ。
もう千年公召喚しちゃうよ? 私が叫べば間違いなく千年公(とその他諸々も)来てくれるよ?
皆からフルボッコされちゃえよ。


「やれやれ、注文の多い奴じゃな」


何か物凄く盛大且イヤイヤと言ったよう溜息を落されてるんですけど。
あれ、なにこれ? もしかして私が悪いの?
もうコイツの相手すんのやだよ。


「さて、もう一度本題にはいるが」

「スルーすんなや、脳を見て分かってんだろ」

「こらこら口調が違うぞ。で、お主が知りたがってるワタシがお主を好きな理由だがな」

「アンタは話自体が違ってますよ。何時私がそんな事聞きました。
妄想も大概にして下さい、マジで」

「所謂一目惚れという奴じゃ」

「いや聞いてませんから。頬染めないでください、はっきりいって気持ち悪いです」

「照れ屋な所も可愛いぞ?」

「うわ、なにこの鳥肌。マジやばいっす、っぱねぇっす」

「そうか、喜んで貰えてなによりだの」

「お願いしますから言葉のキャッチボールをして下さい」

「旦那様と呼ぶならキャッチボールだけでなくベッドの上でプロレスもしてやるぞ?」



あー… 殺 し て ぇ 。



ノア12人集が11人になっても大丈夫だよね、うん。
なんだったらもう一人道連れにさせてキリがいい10人してあげようか。
誰がいいだろ、やっぱティキかな。
ごめんねティッキー、私の平穏の為に犠牲になってください。


「ワタシがいるのに他の男を考えられると不愉快だのう」

「やっぱアンタに常識やプライバシーってもんはねーで――」


ス。と言葉を告げたと同時に、グキッ! って首を動かされました。
正直悲鳴を上げなかったのが不思議でなりません。
普段の私ならそれはそれは大きな 奇声 を上げていただろうに、
何故声がでなかったのだろうと自分で自分の事を不思議に想っていたら。


一体何がどうしてか。

目の前にワイズリーの顔のドアップがありました。




「――今日はこれで許してやろう」



そう言ってワイズリーが離れたと同時に自分の唇からなにやら離れたような気配がしました。

あれ、なにこれ。
もしかして声がでなかったのはアレですか?
まさか唇を塞がれたとかそんな落ちですか?
まさかまさか目の前でムカツク程に笑顔を浮かべてる奴の唇で塞がれてたそんな落ちですか?


「お主は信じてないようだが、ワタシは本気だからの」


いまだ茫然としている私に対してククッと喉で笑うような声を零し、部屋の扉へと向かっていく。

そのまま扉に手を掛けたかと思えば、くるりと私のほうへ振り返り。


「ワタシの魔眼からは逃げられぬ。
お主が本当はワタシの事をどう想っているか、しかと見えているぞ」



――それこそ、お主が知らない所までな。


そんな言葉の直ぐ後にパタンと閉まる音が聞こえ。


それから数秒後、私の叫び声が屋敷の中に響きわたったのでした。



( 一 目 れ )

 
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