――また、やってしまった。


深いため息を落しそうになる口を抑えては、
一人ベッドの下で隠れるようにうつ伏せになりながら嵐が過ぎるのを待つ。

ただ嵐といってもそんじょそこらの嵐ではなく超特大級。
小さな島なら一つや二つ簡単に壊せそうな程大きな嵐である。


「イヴv いい子ですかラ、素直に出てきてくださイv」


そう、千年公という嵐。
普段身内に対しては滅多に怒らないだけに怖い。
普段なら一つのハートが二つも三つもついてるのが更に怖い。
普段からのあの笑顔が超怖い。
うう、助けてティキー…。


「ふむ、こうして隠れるのも中々のスリルじゃな」

「!? ぎっ…ふが!!」


突然真横から声が聞こえては大声をあげそうになった私に、
咄嗟に隣の男が手を伸ばしてはそのまま口を塞がれてしまった。


「大声を出したら千年公に見つかるぞ?」

「ぐ…っ」


それだけは何としてでも未然に塞ぎたいが為に、本来勢いよく口から出るはずだった言葉を何とか飲み込んでは、キッ!と隣にいる額に目を持つ男へと睨みつける。


「なっなんでワイズリーがここにいるの!?」

「面白そうだったからだ」


決まっておろう?とニヤニヤと人の悪そうな笑みを浮かべては、同じようにうつ伏せになって身を潜めるワイズリーに「決まってないわ!」と心の中でツッコミを入れる。

思考を読めるワイズリーにとって声に出そうが、頭で考えただけであろうが大差はない。


「心外だのぉ、家族のプライバシーは守るぞ?」

「既に守ってない時点で説得力の欠片もありませんけど」


絶対コイツ口だけだし。
てかくっつくき過ぎなんだけど。
もう真横ってレベルじゃないよね、軽く重なってるよねコレ。
大体ベッドの下に大の大人が二人で隠れるなんて傍からみると物凄い光景だよね。
何所の悪戯した子供だよって感じだよね。

…まぁ私はそうなんだけど…。


「ほう今度は何をしたんじゃ?」


そんな私の苦悩をやっぱり勝手に読んでは、
身体を横にして頬杖をつくという妙にリラックスした態勢で尋ねてきた。
本当に何々だコイツ。


「お主のあいじn「その脳内設定どうにかしてくれませんか…!」


大体夫すら居ないんですけど!?
そうツッコミを入れた・・その時。


「シー」


再びワイズリーの手が伸びてきたかと思えば、そのまま口を塞がれており。
驚きのあまり身体を大きく揺らすも、私にも聞こえてきた足音に耳を澄ませる。


「ここらから声が聞こえたようナvv」


小さくだけと確かに千年公の声が聞こえ、自分の頭を隠すようにして身を縮める。
コココエエー!!
徘徊してる!
部屋の外を一見紳士(っぽい)鬼が徘徊してるーー!!



「――もう行ったようだな」



鬼…もとい嵐が通り過ぎるまでガタガタと震えていた私だけれど、
不意に口を塞がれていた手が離れてはピクリと体を反応させる。

・・・確かに足音が聞こえなくなった所を見ると他の場所に移動したのかもしれない。
た・たすかった〜…。


「ワタシのおかげで助かったな」

「ワイズリーのせいでもあるけどね」


そんな得意げな顔で言われても、苛立ちさえ感じても感謝の気持ちは沸いてきません。
…まぁその能力は 今 は 便利だけど。


「ん、またこちらにくるぞ」


相変わらずリラックスしたままのワイズリーの言葉に、今度は咄嗟に自分で口を塞ぐ。
こういってはなんだけど千年公も結構しつこいというか、根に持つというか…。


「すぐ其処まできておるな――もう前におる」


だったら黙ってよ…!!
と声にださずに隣にいるワイズリーを睨みつければ、クス。と笑い声が聞こえてきて。
何がおかしいねん!とツッコミをいれようとした――次の瞬間。

ちぅ。

という音と共に、頬に何か柔らかい物が押し付けられていた。


「・・・・?!」


え?と驚いて隣へと視線を向ければ其処には何時の間にかワイズリーの顔があり。
更に私が口を塞いでいる為抵抗できないのを言い事に、ザラリとした感覚まで伝わってくる。


ギ…ギャアアアアア!?


口を塞いでなければ間違いなく大声で叫んでいただろう言葉を代わりに心の中で叫ぶが、
当然隣にいるあくどい男はそんな私に気がついても行動を止める事は無く。

寧ろ楽しんでいるかのように笑みを浮かべては、私の頬や首筋にまでキスをしたり舐める男に更にパニック状態に陥ったのは言うまでもないだろう。

ヒィィ!なんでこんな事にっ!!
ぎゃああっ!耳!耳はいやー!!


「相変わらず敏感だのぅv」


だから耳元で囁くなって…っ!!
あーもう我慢ならん!!

咄嗟に口を塞いでいた手を剥がしては隣…というよりも、
ほぼ圧し掛かっている男を突き飛ばすようにグイグイと力を入れる…が。

自称知能タイプとは言え男は男。
私よりも力があるわけで中々其処から動かす事ができない。

もう誰でもいいからこの男どうにかしてーーー!!



「では我輩がたすけて差し上げましょウvvv」

「・・・・・・・・・・・え」



ギギギ…とまるでさび付いた機械のようにゆっくりと声のした方へと向ける、と。


「こんな所にいたのですネvv服が汚れるというのに悪い子でスvvv」

「ヒィィィッ!?」

「だから大声を出したら見つかると言うただろうに。人の話を聞かぬからこうなるのだ」


どうやら何時の間にか声にでていたらしく…。

まるで私がいう事を聞かなかったからいけない。
とでも言いたげな男はやはりリラックスした態勢へと戻っており。
その言葉と態度に恐怖なのか怒りなのか分からない震えが走ったのは言うまでもない。



「さァv 反省の時間デスvv」

「ワ…ワイズリーなんか大ッ嫌いだァァアア!!」



今だベッドの下でヒラヒラと手を振って見送る男に、千年公の肩に担がれ連れて行かれる私は思い切り叫び声をあげる事しかできなかったのでした。


「やはり隠れるよりもイヴで遊ぶのが一番楽しいのぅ」


( 不 打 ち )

 
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