「あ、つーかさぁ」

「・・・まだ何かあんのかよ」


思い出したように声をあげるロードに、
小さく溜息を落としつつ目の前のテーブルの上に置いてあったティーカップへと手を伸ばす。

さっき散々悩んだ事でなんだか変な頭痛がしてきたぜ…。
(決して普段頭を使ってないからとかそんなんじゃない)


「ティッキーって孕ませるだけ孕ませたら逃げそうだよねぇ」

「ぶっ!!」

「ヒィ!?今度はティキが噴出した!」


お、おまっ…!
あまりにも平然と恐ろしい事を言うもんだから盛大に噴いちまったわ!

・・・まぁイヴが背中を摩ってくれてるからいいけど。


「なぁに?もしかして既に経験ずみぃ?」

「え…っ!?そうなの、ティキ?」

「いやいやいや、んな訳ねぇから。お願いだから引かないでくれる?」


他の奴になら引かれ様が軽蔑されようが(ムカツクだけで)かまわないけど、
イヴにんな事されたらメチャクチャへこむんですけど。


「ティッキーって無駄に顔 だ け はいいし、今まで女には困らなかったんだろぉ?
子供の一人や二人ぐらいいてもおかしくないんじゃなぁい?」

「うわ…」

「だからそんな事してねぇって!
そりゃ確かに人並み程度にはあったけど、大抵一回や二回会っただけだし。
何よりちゃんと避妊してたわ!」

「・・・女の敵」


まてまてまて、何この展開?
何で俺無実の罪でここまでいわれなくちゃなんねぇの?

ていうかイヴに声だけでなく体まで引かれてマジへこみそうなんですけど…!


「イヴも覚悟してた方がいいよぉ。
きっと子供ができたと同時にパッと消えちゃうんだからさぁ」

「ロード、俺お前に恨まれるような事したっけ?」


明らかに何かしらの恨みを込めて言ってるよな?
そんなにイヴの中の【俺】を地に貶めたいのか?


「そう…だよね…」

「は?ちょ、何納得してんの!?」

「だってティキ、自分で流れ者だって言ってたし。
それに職もないのに子供なんて養えないじゃん…」


き…きっつー…。
そりゃ確かに白い俺は職を転々としてる流れ者だけどさ・・・。
だからってそんなはっきり言う事なくね?
そんな白い目で見る事はなくね?
泣いちゃうよ、俺。


「キャハハハッ!落ち込む事ないよぉ、イヴ♪
例え子供ができてティッキーが逃げても、ボクがしぃっかり二人の面倒見てあげるからさv」

「ロードが?」

「うん♪ボクね結構世情には詳しいんだよぉ?
そこらへんの無職で流れ者でホームレスで女に貢いで貰ってる顔が取り柄だけのバカなんかより、ぜーんぜん経済力あるんだから♪」


あれ、全身を刃物で切りつけられたような痛みがするのは何でだ?

なんか頭の上に目に見えない巨大な石が幾つも降ってきたような重みを感じるんだけど、
きのせいだいよな?

はは、なんでか前が霞んできやがったぜ。


「つーことで、ティッキーも今のうちにボクに譲っちゃいなよぉ?」

「誰が譲るか!」


おま、最初からそれが目当てだったな・・・!
どん底まで貶めておいて俺からイヴを奪おうっていう算段か!


「いっとくけど今まで付き合ってきた女達とは綺麗さっぱり後腐れもなく縁を切ってるし、
イヴとの間に子供が出来た所で絶対逃げたりなんかしねぇから!」


イヴとのって言い切ったのは、もうイヴ以外の女と付き合う気がないという意思表示。

それが伝わってるかどうかはわかんねぇけど、俺の隣からややロードの方へと体を寄り添わせつつあったイヴの手を掴んではそのまま横に向きに抱き上げる。


「これは俺のなの――誰にも渡す気もねぇし、離す気もねぇわ!」


そう言うが早いかイヴを抱き上げたまま立ち上がっては、
部屋の出入り口へと歩き出した。

このままここにいたらまたロードに変な事吹き込まれそうだし、
一度でも俺を疑ったお仕置きをしなくちゃな。



「ごゆっくりぃ〜」



そんな事を思いつつ扉を潜ると背後からロードの声が聞こえたような気がしたけど。

とりあえず聞かなかった事にして、
顔を真っ赤にして呆茫然としているイヴと共に自室へと戻っていった。




譲れなんて馬鹿げてる
手放す気なんて1ミリもねぇんだよ

「計画通りってねぇ〜v」

 
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