「ティキに抱きしめられるのが嫌い」

「俺もイヴがくっついてるとこ嫌い」


部屋に設置されたソファに座りながら、二人して淡々と言葉を繋げていく。


「ティキの背の高い所が嫌い」

「イヴの小さい所が嫌い」

「ティキの癖っ毛が嫌い」

「イヴの長い髪が嫌い」


互いに【嫌い】と言っているものの二人の体は隙間ない程に密接しており。
男の上に座らせられた少女は薄っすらと頬を赤くさせながらも必死に言葉を探していた。


「…ティキの優しい所が嫌い」

「イヴの可愛い所が嫌い」


そんな少女とは裏腹に男の口から直ぐに言葉が零れていく男に、少女は小さく睨みつける。
何せ男は少女の言葉をただ真似ているだけなのだから、当然と言えば当然なのだろう。

だがイヴが「ずるい」と声を上げる時間は残されておらず、
すぐさま次の言葉を捜しては途切らせる事なく会話を続けていく。


「ティキの大きな手が嫌い」

「イヴの小さな手が嫌い」

「ティキの唇が嫌い」

「イヴの唇が嫌い」

「ティキの瞳が嫌い」

「イヴの目が嫌い」

「ティキの…っ…ちょ、邪魔しないでよ!」


ニタニタと笑みを浮かべては少女の思考を遮るかのように
たった今【嫌い】と告げたばかりのその小さな手や、瞳へとキスを落としていくティキ。


「これも立派な戦略だし。ほら後十秒ー」

「んなっ卑怯「8ー7−6−」だああっ!!えーとえーと…!」


必死に思考を動かしては彼の【好き】な所を思い浮かべるものの、
既に思いつく所は殆んど言ってしまった後だし。

何より時間を数えられている焦りと、
口付けてくるその感触のせいで上手く思考を働かす事ができないらしい。


「5−3−1、0。はい、イヴの負け」

「何そのあからさま過ぎる飛び数字!?幾ら学がなくたって数字ぐらい数えられるでしょ!」

「どっちにしろイヴの負けには変わりないんだから別にいいじゃん?」

「良くない!」


元々負けず嫌いであるイヴにとって卑怯な手を使われて負けた事が余程悔しかったのか、
ティキの方へと体を向けては不平不満と共にポカスカとその胸を叩いていく。


「大体なんで【好き】な所を【嫌い】に置き換えて言わなくちゃいけないの!?
面倒な上にまどろこっしいだけじゃん!」

「そういうゲームなんだって。文句があるならゲーム作った奴に言えよ」

「ティキじゃないの?」

「俺だけど」


ニヘラと表情を破綻させたティキを見てはより一層殴る手を強める、が。

当然男にさしたるダメージはないらしく「何して貰おっかな〜」と、
勝者にのみ与えられる報酬へと思いを馳せていたとか。


「むぐぐ…っ!もう一回勝負!」


納得がいかないと言うかのように声を荒げる少女に対し、
男は「いいぜ」と言葉を返しては尖らせているその唇へと自分のソレを重ねる。


「ただし先に報酬もらってから、だけどな?」

「えっ!?いや今のは無こ

「な訳ないだろ?やっぱり報酬はイヴ自身って事で」


――頂きます。

そう耳元で息を吹きかけながら告げる男に、イヴの悲鳴があがったような気がした。



嘘つきな君に贈る 甘い罰ゲーム

「このゲームはまりそv」
「もう絶対やらない!!」

 
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