ふにょーん。

「……らうぃはん、なんふぇふは」
「婦長からの命令さね。イヴに会ったらお仕置きしといてって」

 どーせまた怪我したんだろ。なんて言いつつ、抓ったほっぺたを反発する磁石のように左右へと引っ張る。婦長の言うお仕置きとはちょっと違うかもしれないが、イヴを見てると何となく頬を引っ張ってみたくなるから仕方ない。そこに山があったら……と同じ原理だ。
 「それにしても」とラビは思う。女性の身体は柔らかいと言うが、ここまで柔らかいものなのだろうか。いや、この場合は"伸びる"というべきか。恐らくアレンや神田にもよく抓られている為、余計柔らかく……もとい慣れたのかもしれない。イヴ自身痛がっている様子もないし。
 自分以外も触っている。改めてそう思うと、ふとラビの中にモヤモヤした気持ちが生まれる。まるでオモチャを取られた子供のような気持ち。プラス、加虐心。

「いふぇふぇふぇっ!?」
「おー、凄い伸びるさねー」

 アレンや神田以上に"自分の跡"を残すにはどうすればいいか。
 答えは簡単、二人の跡を上書きすればいいのだ。即ち、限界突破イコール更にほっぺた伸ばしてやれ。些か無理がある気もしないでもないが、まぁコレも婦長からの命令という事で。

「これならギネスいけるんじゃね?」
「ふぉんなふぃねふあふは!」

 恐らく「そんなギネスあるか!」と言ったであろうイヴに対し、「確かに合ったら合ったで嫌さねぇ」とケラケラ笑うラビ。それ以前に"ギネス"というものが存在するのかも怪しいが、幸いソレについて突っ込む人物はいない。……ソレを言っていたその時までは。

「……何してるんですか、二人共」

 そんな言葉と共に訝しげ、もとい「こんな所でベタベタしてるんじゃねぇよ、このバカップルが」と言った視線を二人に向ける自称紳士のアレン。正直言うと関わりたくすらなさそうだが、二人が行く手を阻んでいる為回避できなかったよう。

「あっ。あへんふぁふへへーー!!」
「阿片捨ててー。だってさ」
「持ってませんよ、そんなの」

 師匠じゃありませんし。と笑顔で言われると冗談なのか本当なのか、イマイチ笑えない。

「ちはーう! ふぉのうふぁひふぉうにふぁひへー!」
「フォーの秘奥義がスゲーらしいさ」
「ああ、それでバクさんは何時も死にかけてるんですね」
「なんふぇふぁー!! は・ふ・へ・へ・っふぇいっふぁの!」
「すみません、僕人間の言葉しか分らなくて」
「流石の俺も動物語は分らないさ〜」
「あんふぁら、わわほやっふぇうえふぉ……!!」
「そんな事はないですよ」「そんな事ないさね」
「イナイィィィ!! はふへへぇええ!!」

 静かな廊下へとイヴの叫び声が響き渡る。が、裏から婦長によって根回しされた教団内では、誰一人として助けるものはいなかったのだった。



真に恐ろしきは

裏から牛耳る婦長か
嫉妬に駆られた兎か


 
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