「そぉいえば、今日ってティッキーの日だよねぇ〜」
「はぁ?」


千年公からの仕事を終え、報告を兼ねて屋敷へと帰館。少し休んだらイーズ達の所にでも行くかなー……なんて考えていた所で、不意にロードの声が響き渡った。
俺の日? 誕生日とかか? ……いや、俺だってしらねーのにロードが知ってる筈ないか。


「ヒヒッ、バカな日とか?」
「ちげぇよ。ホームレスの日だろ?」
「お前等は黙ってろ」


そんな事を考えていれば、俺よりも先に双子が口を開く。人事だと思って好き勝手言いやがって。つか、バカとかホームレスの日とかあんのか?


「キャハハ♪ 今日はぁ、アリス・デーだよぉ」
「アリスデー?」


俺や双子の言動を見てか、何時もの甲高い笑い声の後に真意を告げるロード。――もっとも、それによって更に俺達の頭上の疑問符が増えたのは言うまでもない。


「そ〜、4月25日はアリス・デー。つまりティッキーの日ぃ〜♪」
「ちょっとまて。何でソレが俺の日になるのか分んねぇんだけど」


なんて、ちょっと怒ったように告げてみるも、ロードは相変わらずのニタニタ。
……コイツ、何か企んでやがるな。ここは「やっぱいいいわ」と言って早々に立ち去るべきか、それとも意を決して続きを聞くか。えーと、アレだよアレ。こ……こけつをはいらずんば………なんとか。


「アリス・デーってのはぁ、ロリコンの日の事だよぉ♪」
「ぶっ!」


そんな事を考えている間にもロードの口は動き、続けて聞こえてきた言葉に思わず吹き出しちまう。飲みもの飲む前でよかったわー……って。


「誰がロリコンだっ!」
「だからティッキーだっていってんだろぉ」
「ギャハハハッ!!」


耳ついてんのぉ? と悪態つくロードと、腹を抱えて笑い転げる双子。マジぶん殴りてぇ。つーかロリコンってのはロードのような子供を好きな奴に言うんだろ。少なくとも俺は、ロードにそんな気持ちを持った事すらないわ!


「ボクだってオッサンはごめんだよぉ。でも、これを見ても違うって言えるぅ?」


ニタリ。まさにそう笑みを深めたかと思えば、スッとロードの身体が隣へと移動する。何かを求めに動いたのではなく、何かを……自分の背後を見せる為に隣へと動いたロード。それによって現れたのは、大きめのソファと、そして……。


「じゃーん。可愛いでしょぉ、折角だからアリスの格好をさせてみたんだぁ♪」
「……」
「…………」


ロードの言葉通り、見慣れない服を着てソファの後ろに座っている少女――イヴ。
……や、うん、可愛い事は可愛いんだけどさ……なんか、凄い事になってね? 周りに散乱してるのお菓子だよな? 座っているとはいえ、腰から下ソレで埋もれてんだけど。もしゃもしゃ言ってるし、ハムスターみたいにほっぺたまで膨れてるし。あんまり餌……もとい、菓子やんねぇで欲しいわ。


「ヒヒッ、イヴイヴ可愛いッス!」
「……まぁ、メイクや服はいーんじゃね? 中身は別として」
「デビも素直じゃな……ヒィッ!!」


俺よりも先にイヴに駆け寄ったかと思えば、何時もの漫才を繰り広げる双子。
オイ、俺のイヴに当たったらどうすんだ。つか勝手に人のもんに触るんじゃねぇ。


「それがロリコンっつーんだよぉ」
「お前も勝手に人の心を読むな」
「読まなくても顔にでてんだよヘタレ。さっさと認めちゃいなよぉ」
「何処の悪役だ」
「ノアの一族〜」


だーもうコイツはあーいえばこう言う……!
大体イヴは幼女っていう年じゃねぇだろ!


「でもティッキーより十も下じゃん」
「外見だけだろ。中身は俺よりも数百……あだっ!?」


上。と言いかけた所で頭へとヒットするお菓子。……や、お菓子だよな? なんか今ガコンッて凄い音したけど、本当に菓子だよな!? 何くってんのコイツ!?


「なになに? それともイヴが可愛くないって言うわけー?」
「誰もんな事言って……」


ねーだろ。とやっぱり言いかけた所で、ふとロードのニヤつき顔に気がついちまった。

――もしや……。
ここで俺が可愛いと言う=ロリコン決定。
かといってロリコン否定=イヴが可愛くないと判断される……?


「きったね……ッ!!」
「あーあ、イヴかわいそー」
「うっ!」


俺が悟った事にロードもまた気が付いたのか、ワザとらしく声を張り上げては、座っているイヴの首へと抱きつく。だーかーらー! 勝手に人のもんにくっつくんじゃねぇ! ……なんて思うものの、イヴの表情にシュンとした影が差した事で息を飲んでしまう。

なんつーのかな、こう、ペットが飼い主に怒られてしょげてるような感じ? うん、つまりスゲェ可愛いって事。しかも俺の一言でしょ気てるのかと思うと、めちゃくちゃ可愛い。


「きゃー、イヴってば可愛いー♪」
「オイコラ、勝手に人のもんに抱きついてんじゃねぇ。ジャスデロも便乗してんな」
「ロリコンじゃないならイヴにだって興味ねーんだろぉ。何しようが勝手じゃん」
「コイツは……!! 最初からそれが目当てだったんだろ!」
「べつに〜? ただティッキー自身がロリコンだって認めればいいだけだと思うけどぉ」


さぁ、どうする――そう言うかのように、ニヤニヤと挑発紛いの表情を浮かべるロードに対し、思い切り顔を顰める俺。

どうするかだなんて、そんなの決まって……決まって………。

…………ドウシヨウ。



Alice Complex
「イヴは好きだけどロリコンとは言われたくない。でもやっぱりイヴが……」
「何ブツブツ言ってんだ、ホームレス。バカイヴはバカイヴで落ち込んでるし」
「お菓子無くなっちゃった」
「ヒヒッ、食べすぎッス」
「ティッキーはバカすぎだしねぇ」


 
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