「お前、本当に馬鹿だな」
「うるせえ」

 米花中央病院。
 悪夢のような11月7日を無事に切り抜けたその一室で、二人の青年が談笑していた。談笑といっても笑っているのは片割れのみで、ベッドに横たわる部屋の主は不貞腐れたように口を尖らせている。

「結局今回もあの人が解決したって?」
「民間人に助けられっぱなし、か。警察の名折れだぜ」
「元警察官だからノーカン、ノーカン」
「けっ」

 ベッドの住人・松田陣平は憎まれ口を叩きながらも、話すうちに口元が緩んでいく。
 ベッドサイドに置かれたPHSを手にとり、表を向け、裏を向け。手遊びがてらひっくり返して遊ぶ。

「つーか、解決したにしても、ほとんど勘じゃねえか」
「勝負運が強いんだろ」

 そういう星の下に生まれてんだ、ああいうのは。
 そう言って笑った萩原研二は、窓を開けて冬の気配を含みだした風を室内へ取り込んだ。
 寒ィよバカ、と文句を垂れる松田を尻目に外を見ていれば、一人の男がやってくるのが見えた。

「お、日本警察の救世主がお出ましのようだ」
「なーにが救世主だ……。ただの探偵だろ、毛利小五郎って男は」


夕星を越える



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