今年の春、宮地さんは卒業する。

WCで洛山に負けた俺たち秀徳高校は、負けと同時に先輩たちの部活引退。

先輩達が学校を卒業する日が近付いていた。

俺の大好きな宮地さんもその一人だ。

俺はその現実を受け止めないと、と思い、宮地さんと離れるのが苦しい気持ちを押し殺した。

それからは卒業するまでの日数を心の穴を埋めるように俺はバスケに費やした。

そして、宮地さんたち先輩方が卒業する日が訪れた。

俺はいつも通り笑いながら先輩たちを送りだそうとした。

誰も俺の表情を不審に思わず笑いかけてくれた。

その中には宮地さんもいて、俺に笑いかけてくれる。

その表情を見たとき、俺は気付いてしまった。

胸の奥へ閉じ込めていた思いが…。

宮地さんが好きだという気持ちが俺の中には残っていて、宮地さんとまだ離れたくない。

どうしようもなく好きなんだ。

その瞬間、思いが溢れ出た。

思いとともに涙まで込み上げてきた俺はその場で泣き出してしまった。

俺のそんな様子を見て驚き心配してくれる先輩たちから逃げるようにその場から駆けだした。

その場にいられなくなった俺は屋上へ向かった。

屋上に着いた途端に今までの宮地さんとの思い出が一気に頭の中に流れ出し、余計に涙が込み上げてきた。

そのとき、後ろから俺を呼ぶ声がして驚き、振り返ってしまった。

そこにいたのは…宮地さんだった。

俺は宮地さんにこれ以上泣き顔を見せないように服の袖で目を拭った。

そんな俺の腕を掴んで宮地さんが思いがけないことを言った。


「高尾!お前が好きだ!」

「…えっ…?」


俺は耳を疑った。

宮地さんは今何て言った?

俺が、す、き?


「お前が好きだって言ったんだよ!」

「でも、何で…」

「本当は言うつもりなかったんだっ。このまま離れる方がお前のためにもなるって」

「宮地さん、何を、言って…」

「恋人が男なんて公に言えないだろ!?だから、俺が卒業しても気持ちを伝えないでいようって考えてたのに、お前がっ・・・お前が、俺を見て泣きだすからっ!やっぱり、伝えないままでなんていられねぇって思っちまったっ…」

「みや、じ、さん…」

「そんな顔してるお前を1人になんてできるかよっ」

「……ヒック、みやじ、さん」

「もう一度言うぞ」

「…は、い」

「高尾好きだ。俺と付き合ってくれるか?」


そんなの…決まってるじゃないですか。


「はい、お願い、します…」

「高尾」


宮地さんに抱きしめられながら、俺はこう思った。

もしかしたら、俺のポーカーフェイスも俺の本当の気持ちも宮地さんには通用しなかったんだって。

だって、こんなにも宮地さんの前では平静を繕えない。

本当に好きになった人の前では気持ちは偽れないな。

宮地さんの背に腕を回し、抱きしめ返しながら俺は今ある幸せをかみ締めた。

(本当の俺を見つけてくれてありがとう)

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