許されるならば傍にいさせて-宮高-


今日もいつも通り俺達秀徳高校は冬のWCを目指し練習に励んでいる

IHでは誠凛に苦渋を舐めさせられたからな

次は俺達が勝つ

そんな日々の中、団体練習が終わり自主練に移ったとき

真ちゃんに呼び止められた


「高尾。今日はおは朝の順位が悪いから早めに帰るのだよ」


おは朝…空気読め

なんて思ったが、このおは朝信者には効かないことは分かっている

全く、そのおは朝に従順なとこをもっとチームに活かしてほしいんですけど


「はいはい、分かりましたよー」


俺は適当に返事をし、真ちゃんへパスした


「んで?何時頃上がる予定?」

「いや、俺は1人で帰る」

「へ?」


真ちゃんが言ったことに思わず変な声が出た


「俺は1人で帰るのだよ」


もう一度同じことを言った


「え?じゃあ俺どうすんの?」

「知らん」


このツンデレ眼鏡ー!!いつも朝迎えに行ってやってんのになんだよそれ!

俺は胸の内から湧き上がる怒りを宥めながら


「分かりましたよー。じゃあ…」


さっきから俺達の方を見ている人と帰りますかー


「宮地さーん!」


真ちゃんに渡すはずだったボールを持ったまま宮地さんの元へ走り寄った

後ろから真ちゃんの俺を呼ぶ声が聞こえるけどそんなの知りませーん

俺は今目の前にいる人に用があるのだ


「何だよ」


さも知りませんみたいな風にしてますけど俺には見えてましたよー


「今日一緒に帰りましょ?」


少し小首を傾げながら聞いた

俺の身長からして必然的にみんな上目遣いになるんだ

だからやるのはこれだけ

そして宮地さんが俺のこの仕種に弱いことも知っている

案の定宮地さんは少し口角を上げながら


「緑間はいいのか?」


と聞いてきた


「早くに上がるみたいなんでいいんですよー。それに1人で帰るみたいですし」

「へー、じゃあ俺が終わるまで待ってろよ?」

「はーい!」


宮地さんからの了承も得たし、真ちゃんのとこに戻りますかーと考え後ろを向いた瞬間、急に後ろから腕を引かれた


「うわっ!」


そのまま後ろに倒れると宮地さんの腕の中に受け止められた


「宮地さん?どーしたんですかー?」


その体勢のまま宮地さんを見上げると悪戯を思いついたような悪い顔をしていた

え?なにごと…?

そんな宮地さんを見つめていると俺を抱きしめていた宮地さんの腕が服の中に入ってきた


「うひゃっ…え?ちょっ、や、みやじさん…」


宮地さんのいきなりの行動に驚いた俺は服の中に入っている腕を掴んで止めさせようとした


「みやじ、さん、ひゃっ…んっ、みんな、見てる、ん、からっ」


こんな状況でも働く俺の鷹の目は体育館に残っている部員の姿を捉えていた

いやいや、真ちゃんとか何顔赤くしてんのお前

大坪さんも木村さんもそんな我関せずみたいな顔してないで助けてくださいよ!


「もうっ、みやじさん、はうっ、やぁ…まじ、止めてっ」


俺の腰を弄っていた宮地さんが急に動きを止めたため、腕の中から抜け出した


「ちょっと、宮地さん!何すんですか、いきなり!」


俺が文句を言うと宮地さんは


「お前何でそんなにあざといの。まじ轢くぞ」


いきなりの暴言!?俺ちょっと首傾げたりしただけで抱きついたりしてないんですけどっ!


「とりあえず、お前この後俺ん家来い。拒否権はない」


と宮地節を発揮する宮地さんに俺は逆らえませんでした

なにこれ理不尽

そんな変な雰囲気の中予定通り真ちゃんは早めに上がっていき

鍵当番の宮地さんと俺を残して大坪さんたちも帰って行った

後片付けをしながら鷹の目で宮地さんを盗み見た

ほんと、イケメンなのにドルオタで物騒な発言するとか残念だよなー

まぁそんな宮地さんに惚れた俺もどうかしてんのかもしれないけど

でも…あの人普通にかっこいいこと言ったりしてくるんだよな

まじ憎めないわー…

そんなことを考えているとは知らない宮地さんは


「おい、高尾。サボんなよ、埋めんぞ」


また物騒な発言をかましてきた


「はいはーい。分かってますよー」


軽い返事を返した

それに少しイラッとした宮地さんに首を絞められた


「お前、先輩にそんな態度とっていいと思ってんの?」

「ちょっ!宮地さん、ううっ…ギブギブ!」


首に巻きついている腕を離してもらえるように叩いた


「ったく、真面目にやれよ」

「…はい」


そんなやりとりを繰り返しながら着替えを済ませ戸締りをした

宮地さんが鍵を返しに行っている間校門で待っていた


「はーっ、寒くなってきたなー」


つい最近まで日が長かったのにもうこんなに暗くなっちゃってる

もう冬が来るのか…と俺は少し黄昏ていた


「待たせたな、帰るぞ」


宮地さんが来たことで現実に引き戻された


「おい、聞いてんのか?高尾」

「あっ、はい…聞いてます」


少し俺に元気がないことに宮地さんは目聡く気付いた


「お前が元気ないとか気持ち悪いな」

「気持ち悪いって、そんなこと言わないでくださいよー…」


ほんと、容赦ないな


「何、なんかあった?」


それでも聞いてくれる宮地さんはやっぱり優しい


「いや、もう夏終わって秋じゃないですか」

「あぁ、そうだな」


それがどうした?みたいな顔で俺の方を見てくる


「このまま冬になってWCで優勝したとしても、宮地さんとバスケできるのはその日までなんだなって思って…」


分かっていた。宮地さんと付き合っていても今一緒にバスケをしていても

俺と宮地さんの間にある二年という歳月は

どうやっても埋められない


「……」


俺の話を聞きながら無言で俺を見つめる宮地さんの顔を見ると

さっきまで俺のことを弄って遊んでいたときの表情ではなく

真剣な顔をした宮地さんの表情が俺の目に映った

なんで宮地さん、そんな顔してんですか…


「今こうしていられるのもいつまでできるのかなって、思って…」


宮地さんの表情と自分で考えていたことを口に出した瞬間、泣きたくなってきた

きっと宮地さんは高校を卒業したら俺と別れた方がいいんだ

それで新しい彼女さん見つけて俺とのことはなかったことにした方がいいんだ

だってそうしないと俺宮地さんから離れられなくなる

俺のことうざそうにしたり、調子に乗り過ぎて絞められたりするけど

それでも甘やかしてくれたり、俺のことなんだかんだ言って構ってくれる宮地さんが大好きだから…だからっ


「宮地さん…俺、宮地さん大好きっ。高校卒業しても大好きですし、たとえ宮地さんが俺から離れていっても大好きですっ」


宮地さんに気持ちを伝えている間に俺の目から堰き止めていたものが決壊したかのように涙が溢れてきて止まらなかった


「だからっ、だから…」


服の袖で涙を拭っても拭っても溢れてくる涙を止められず、俯いた

宮地さんの顔が見れず、言葉を紡ごうとしても出てこない

考えれば考えるほど悪い方にいってしまう

さっきまでふざけあっていたのに、俺の発言でこんな雰囲気になっちゃったな

そんな自問自答を繰り返していると急に腕を引かれ、宮地さんの腕に抱きしめられていた


「っ!?みやじ、さん…?」


俺を抱きしめている宮地さんを見上げると不機嫌そうな顔をしていた


「あのさ、お前が何をそんなにぐだぐだ考えてるか知らないけど。単刀直入に言うぞ」


宮地さんの両手が俺の頬に当てられ、視線を逸らすことを許されなかった


「俺は卒業してもその先も、お前を手放す気なんてないからな」


強い口調でそう言われた

一瞬何を言われたのか理解できなかったがその強い眼差しから

宮地さんが本気だということが分かった


「俺が卒業してからお前から離れる?ふざけんなよっ。誰がそんなこと言った!?」


俺を見る宮地さんの表情が悲しそうに歪められた


「みやじ、さん…」

「お前を離す気なんてない!俺はいつもそう思ってた…でもお前は違ったのか…?俺がお前から離れてもいいって思ってたのか!?」


そんなこと…そんなことあるわけない


「俺だって…俺だって、宮地さんと離れたくない!宮地さんが卒業してもどこに行っても、宮地さんの隣は俺の居場所だって、思ってます…!」

「だったら、お前は黙って俺の隣で笑ってればいいんだよ!今日みたいにバカやって、俺の隣にいればいいんだっ!」

「っ!…はい、これからも傍にいます」

「あぁ、絶対離さないからな」

「はい、捕まえといてくださいね?」

「当たり前だろ。どこにも行かせねぇよ」

「宮地さん」

「何だ?」

「大好きです」

「俺も好きだ」


そうして俺達はお互いをもう離さないとでもいうように抱きしめた

宮地さんに強く抱きしめながら俺は思った

宮地さんが俺の顔を目を見て必死に思いを告げてきた

俺だけじゃなかったんだ…こんな気持ちなのも

隣にいたいって思ってたのも

思いは同じだったんだ

もう絶対離れようなんて言わないよ

だってこんなにも俺を思って必死になってくれた

そんな宮地さんだからこそ好きになったんだ

だから俺のこと


[もう離さないで]



↓あとがき

第一位宮高です
最初はギャグちっくだったんですが、まさかの修羅場からハッピーエンドです
今まで宮高ってどんなの書いたか思い出して、宮地さんにも高尾ちゃんを思って必死になってもらいました
高尾ちゃんは相変わらずの乙女思考ですが…
男前×乙女って完全にNLな感じですが、今回最初は高尾ちゃんにあざとさを意識した行動を起こしてもらいました
あざとさ自覚あり高尾ちゃんも可愛いですよね
むしろ小悪魔高尾ちゃんでもおいしいです
時間軸はWC前の10月頃イメージです
東京の気温なんて知りませんが、10月でも暖かそうですよね
10月になるともう寒い印象が強いので…そこは大目に見てください
こんな感じでリクエスト企画全CP終了しました
が、皆さんが満足いく結果になったのか心配です…
とりあえず、企画終了です
投票してくれた方、または小説を読んでくれた方、ありがとうございました!
また、企画立てる機会があればよろしくお願いします!

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