第2話*正体

「・・・えーと、君はどうやってこの棟に入ったの?」
少し戸惑ったように先輩が私に聞く。
あ・・・そういや私、不法侵入状態なんだっけ・・・・。
「鍵が開いてたので・・・気になって入ってみたんです・・・。すいませんっ!」
私は謝って、思いっきり頭を下げる。
「いやいや!いいんだよ!別に何もないし・・・。大丈夫だから!」
ぱたぱたと手を振って答える先輩。
あぁ、まるで仏様のようだ・・・。後光が差していらっしゃる・・・・。
「あ、せっかくここに来たんだしさ、ウチの部活・・・というか同好会見学していく?この廊下の一番端で活動してるから」
「えぇっ!いいんですか!?是非っ!行かせていただきますっ!!」
先輩はにっこりと笑って言った。
これは行くしかないでしょう!!私は何て幸せ者なんでしょう・・・!!
「あ、僕は3年の有村光介ね。君は?」
「紺野咲穂ですっ!」
「咲穂ちゃんね。じゃあ咲穂ちゃん、行こうか」
「はいっ!」
こうして、私は幸せを噛み締めつつ、光り輝く光介先輩と同好会の部室へと向かうことになったのだった。


『理科教官室』
その教室のドアの前に、私は立っていた。
理科教官室って・・・理科系の同好会?まぁ、私理数系だからいいんだけど・・・。
「はい。ここだよ」
光介先輩が、『開けてもいいよ』と目で私に伝える。(私にはそう思えた)
私は覚悟を決め、ゆっくりとドアを開けた。
−この先に、私の人生の転機が−・・・・
・・・・・・・・・ありませんでした。
ばたむ。
私は静かにドアを閉めた。
「あれ?入らないの?」
「いや・・・・、何か見ちゃいけないものを見たので・・・・」
奇妙な、その一言ではいいきれないような、あれは−・・・
「見ちゃいけないもの・・・?あぁ、ポールの儀式か」
光介先輩は、さらりと言って、またドアを開ける。
いや、何なんですかポールの儀式って!ポールは人の名前ですか!?いやその前にこの同好会は一体何なんですか!?
「会長、新入生連れてきたよー」
私の戸惑いも知らず、先輩はのんびりと言う。
「新入生!?光介でかしたわね!」
「紺野咲穂ちゃん。鍵が開いてたから入ってみたんだって」
「あぁ、もしかしたら私が開けっ放しにしたのかもしれないわ。・・・それより、咲穂さんよね!?さぁ早く儀式に参加しましょう!」
こちらに向かって笑顔を向ける部長さん・・・っておい。
「えぇっ!!私も参加しなきゃいけないんですか!?」
「当たり前よっ!これは週一回の神聖な儀式なんだからっ!」
「えぇえええっ!」
私は『助けて』と光介先輩に目で訴えた。−が、先輩はさわやかな風をバックに吹かせ、
「大丈夫だよ。棒真ん中に立てて周りを歌謡(うた)いながら回るだけだから。別に怪しいモノじゃないし」
−いやいやいや。十分怪しいでしょソレ。私が心の中でツッコミを入れていると、
「あっれー?ぶちょー、新入生の勧誘ー?」
不意に、私の後ろから、声が聞こえた。
「里沙・・・遅刻よ」
「ごめんなさーい、提出物集めてたから・・・」
ぴょこんと私の前に里沙、と呼ばれた女の子が出てくる。
うわ・・・すっごく可愛いっ!
高めの位置で結んだ長い髪。くりっとした大きな瞳。小さな身長。
まさに美少女!
そういえば・・・気に留めなかったけど、部長も美人さんだぁ・・・。 
肩につくくらいのショートヘア、少しつっている目、高めの身長。
あれ?この同好会って美男美女ばっか?
「まあ、いいわ。萩也(しゅうや)も結依奈(ゆいな)も、こっちにきて!そろそろ始めるわよ」
部長が、自分の後ろに向かって声をかけると、部屋の端にあるドアから、2人の男女が入ってくる。
「部長〜、遅いですよう」
「本当ですねー、どうかしたんですか」
って、この同好会まだ人いたんだ!うわやっぱり2人とも美男美女!
萩也、と呼ばれた方はのほほんとした感じ。結依奈、と呼ばれた方はおっとりとした雰囲気である。
「新入生が見学に来てたから遅れたのよ」
部長が落ち着いた様子で言うと、
「えぇっ、新入生ですか?珍しいですねえー」
「へぇ、景気がいいですね」
さして驚いたふうもなく、これまたのんびりと答える2人。
部長と里沙先輩とはまた違った意味で変わった先輩だなぁ・・・。
「さ、始めるわよ!みんな配置について!咲穂さんはこっちよ」
「え?ちょっと待って下さい、やるなんて誰も・・・」
部長は私の抗議の声も聞かず、私の手を引っ張り、輪の中へ無理やり入れる。
「我等は主(ぬし)ニュートンを崇める者!」
「主ニュートンよ、我等の願いに答え給え!」
部長と光介先輩の短い口上の後、ほかの部員たち・・・と私は真ん中に立てられた棒のまわりをよく分かんない歌を謡いながらぐるぐると回る。
何なんだあぁ!?主ニュートンって!?ニュートンって確か万有引力がどうとかの人だったよね!?何でそんな人崇めるんだあぁぁぁ!!
私の頭の中は『なぜだ』という言葉でいっぱいになった・・・。


「ふう。今日の儀式はこれで終わりよ」
部長がそう言ったのは、儀式を始めてから10分程たった頃だった。
「あのう・・・。この同好会は何なんですか・・・?」
私は恐る恐る部長に聞いた。
「この同好会は、主ニュートンを崇める『ニュートン研究同好会』よ!」
−きっぱり、と。部長は言い放った。
にゅーとんけんきゅうどうこうかい・・・・?
光介先輩・・・・。この同好会、一体何なんですかあぁぁぁぁ!?


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