白馬の王子様は夕日と共に
「迎えに行く。」

我愛羅がマリンにそう言った日から
もう1ヵ月が経っていた。

マリンは木の葉の里へ帰ってから
綱手やカカシに我愛羅と同棲をしたいと
いう事を伝えると、
綱手に関しては、マリンが逆に戸惑う程の潔い二つ返事でOKを出した。

一方、カカシは
最終的に許可はしたものの、

「せめて…せめて、
一ヶ月に一回は必ず顔を見せに来て!」

と、泣きついてきたので、マリンは

『もちろん。そんなのお易い御用だよ。
私もお兄ちゃんに会いたいし。』

と、素直な気持ちを伝えると、

「…やっぱり、お兄ちゃんも
一緒について行ってもいい?」

と、カカシが言い出したので、
それに関しては、ひたすら
聞こえない振りをしたマリンであった。


そんなこんなで
1ヵ月はあっという間だったが
肝心の我愛羅からは
一切、音沙汰無しであった。

寂しい気持ちを紛らわそうと、
マリンはお気に入りの場所でもある、
里を一望できる丘で夕日を眺めていた。

『そういえば前、
我愛羅と一緒に、ここで夕日見たっけ…』

いつか、
ナルト達と一緒に焼肉を食べ、
その後、我愛羅と二人きりで
こっそりと抜け出した事、

そして、この場所で 夕日を眺めながら、
初めて我愛羅とキスを交わした事を
マリンは思い出した。

寂しさを紛らわす為に来たつもりが
さらに寂しさを募らせてしまったマリンは

『帰ろう。』

と、呟いて視線を落とした時だった。



「マリン」



ずっと聞きたかった声が後ろから聞こえ、
マリンは顔を上げた。


マリンが後ろを振り向くと、
穏やかな笑みを浮かべた我愛羅が
立っていた。



「マリン、迎えに来た。」



まるで「おいで」と言う様に
両手を広げた我愛羅に
マリンは勢い良く飛びついた。

『我愛羅っ、』

「マリン…会いたかった。」

『うん、私も会いたかった…』

マリンの背に回した我愛羅の腕に
ぎゅっと力が入った。

「お前を万全の状態で迎えられる様、
溜まっていた仕事を一気に片付けていたら
思ったより時間が掛かってしまった。」

お互い、今までの寂しさを埋める様に
しばらく きつく抱き合ったままでいた。


「待たせてしまって、悪かった。」


『…ううん、
迎えに来てくれるって、信じてた。』


「…マリン、」


我愛羅が、愛おしむ様にマリンの頬へ
自分の頬をすり寄せた。


「これからはずっと、一緒にいよう。」



耳元で聞こえた我愛羅の優しい声に
マリンは力強く頷いた。


綺麗な夕日が
そんな二人を見て安心したかの様に
ゆっくりと沈んでいった。





女神と恋をする。END




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