甘い匂いに吸い寄せられて
「よう、調子はどうだね?」

後ろから声がかかり、
我愛羅とカンクロウが振り向くと
綱手が手を上げながら歩いて来た。

「ああ…」

我愛羅が綱手に向き合うと同時に
綱手の後ろから
ひょこりと綺麗な女性が出てきた。

我愛羅は女性を思わず二度見した。

「…は?…マリン?」

我愛羅の声を聞いたカンクロウが
「え!?マリン!??」と
目を丸くしながら叫んだ。

予想以上の二人のオーバーリアクションに
綱手がクスクスと笑った。

『はい、お久しぶりです。』

マリンは"仕事の顔"でペコリと頭を下げた。

「久しぶりじゃん!
誰か分かんなかったじゃん。
元気だったか?」

『カンクロウ、久しぶりだね!
元気、元気〜♪ 』

久しぶりにカンクロウの顔を見て
表情を緩めたマリンは
もう、すっかりプライベートの顔だった。

そんなマリンから
我愛羅は目が離せずに、ゴクリと唾を飲んだ。

綺麗にめかし込んで
すっかり「大人の女性」となった彼女に
戸惑いを隠せなかった。
あまりにも綺麗で、思考がついていかなかった。


その時、「火影様ー、」と遠くで
綱手を呼ぶ声が聞こえた。

「すまない、呼ばれた様だ。
じゃあ失礼するよ。」

スタスタと歩いていく綱手。

マリンは、我愛羅とカンクロウに
微笑みながら小さく手を振ると
綱手の背中を一生懸命 追っていった。

「…我愛羅、俺、
もしマリンがお前の彼女じゃなかったら
今すぐホテルの部屋まで引っ張って行く所だったじゃん。」

小さくなっていく
マリンの背中を見ながら
カンクロウがボソッと呟いた言葉に
我愛羅がピクリと肩を震わせた。

我愛羅が
カンクロウを殺気の含んだ目で睨むと
たちまち辺りに砂が舞い上がった。

「や、じょ、冗談だっての!!
マジになんなじゃん!!」







カンクロウの
冷や汗でビッショリになった背中が
やっと乾いてきた頃、
綱手とマリンは挨拶周りも一通り終わり、
数々の料理が置かれる
バイキングのコーナーに来ていた。

「マリン、そろそろ腹も減ったろう?
ここからは自由時間でいいぞ。
私も旧友と募る話があるからな!」

と言いながら、
クイッとおチョコを
煽るジェスチャーをする綱手。

『はい!わかりました!
あまり飲みすぎないで下さいね(笑)』

「ああ、何かあったら
声をかけてくれ。あの辺にいると思う。」

会場の真ん中らへんを指差した綱手に
マリンは『分かりました!』と頷いた。




マリンは綱手と別れると
美味しそうな料理を皿に
これでもかという程よそって食べていた。

『ひゃ〜♪うふふ〜♪美味しい〜♪』

お腹もだいぶ膨れ、デザートコーナーを
物色していると、
夢中になり過ぎて、近くにいた人物と
軽く肩がぶつかってしまった。

マリンが慌てて顔をあげると、
爽やかな雰囲気でグレーのスーツを
ビシッと着こなした長身男性と目が合う。

『すっ、すみません!』

「ああ、大丈夫ですって…
お前、まさかマリンか??」

『へ?』


マリンは再び視線を上げて
男性を見つめた。



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