無意識小悪魔な女神様
風影邸の中にある
我愛羅の自室に移動した二人は
お互いの近況を話していた。

『あ、そういえば、
テマリとカンクロウは?』

「カンクロウは朝から任務で出払っている。明日には帰ってくるはずだ。
テマリは昨日から木の葉に行ったな。
おおかた、
シカマルに会いに行ったんだろう。
2人ともちょうどマリンとは入れ違ってしまったようだな。」

『そうだったんだ…』

チラリと自分が持ってきた袋を見たマリン。

我愛羅もその視線を辿り、ずっと疑問に思っていた事を口にした。

「ところでそれはなんだ?」

『えっ!あ、えっとね…』

ゴニョゴニョ口ごもるマリンだったが
意を決して口を開いた。

『今日ね、ほら、
丁度バレンタインデーだったからさ、
皆に作って来たんだけど、
皆、いないの残念だなーって、アハハ…』

「?俺が食べるから構わない。」

あっけらかんと言う我愛羅に
マリンは戸惑う。

『あ、えっとね、
こっちはテマリ達に作ってきたの。
で、こっちは我愛羅に。』

一つだけラッピングの違う袋に
我愛羅はキョトンとしてから、
頬を緩めた。

「これは、
本命、として捉えてもいいのだろうか?」

優しくマリンを見つめる我愛羅に
マリンは顔を赤くさせながらも頷いた。

「ありがとうマリン、俺のために。」

ふわりと表情を緩める我愛羅に
ドキリとしたマリンだったが
同時に他の女の子にも
こんな表情を向けている所を
想像してしまい、目線を落とした。

『マリン、さきからどうしたんだ?
何かあったのか?』

心配そうに
すり、とマリンの頬を撫でる我愛羅。

我愛羅の優しい手つきに
マリンは、無意識にポツリポツリと
言葉をこぼした。

『ここに向かってる時にね、
同い年くらいの女の子達が、
我愛羅の話してたのを聞いたの…』

「俺の話?」

『うん、我愛羅がカッコイイって…
確かに我愛羅は凄くカッコイイし、
我愛羅がそうやって言われるの
私、嬉しいけど…なんかモヤモヤしちゃって、』

「…。」

『チョコもいっぱい貰ってるんだろうなって思ったら、なんか…渡す自信無くなって来ちゃって…で、我愛羅が女の子からチョコ貰ってるの想像したら、なんか、またモヤモヤしちゃって…』

未だに無言の我愛羅に、マリンは
ハッと我にかえった。

「ご、ごめん!私っ、
これ、完全に
ヤキモチ妬いてるみたいじゃん…
何、変な事を言ってるんだろ!
やだ私ったら!心狭すぎるでしょハハハ!
我愛羅今の忘れ…っ!!」

我愛羅はマリンの腕を引っ張ると
ぎゅぅぅ、とキツく抱きしめた。

『え、が、我愛羅?』

「マリン…わざとか?」

『へっ?』

「はぁ…とんだ小悪魔だな。」

マリンから離れた我愛羅は
チョコを貰ったのはマリンが初めてだ、と言った。

『え?そうなの?』

「ああ、食べてもいいか?」

『うん!もちろん!』

ラッピングされた袋から
出てきた物を
もの珍しそうに見つめる我愛羅に
マリンは、
『これはティラミスって言うんだよ』
と言った。

我愛羅がパクリとひと口食べると、
まろやかなクリームチーズと、
ビターチョコとコーヒーの混ざった
決して甘すぎない風味が口に広がった。
「美味い。」と我愛羅が呟くと、
マリンはホッとしたように口を開いた。

『よかった…
味見してなかったから、
正直不安だったんだ〜』

「マリンも食べるか?」

ティラミスをマリンに渡す我愛羅だったが
何を思いついたのか、マリンの手から
ティラミスをひょい、と取り上げてしまった。

『我愛羅?』


「味見、するんだろ?」


ニヤリと笑った我愛羅の目は
微かに熱を含んでいた。




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