今まで有難う。と、臨也さんはコーヒーカップを持ち上げて言う。
 じんわりと目尻が痛くなって涙がでそうになる。嗚呼、どうしてそんなこと言うんですか。と臨也さんに言いたいが声が出ない。
 臨也さんはカップの中に入っているコーヒーを啜って、かちゃりと置いた。

「別に別れてほしいとか、君がもう必要じゃなくなった。とかじゃないよ。今まで有難う、これからもよろしくね。って言う純粋に感謝の言葉を言いたかったの、俺は」

 ………吃驚した。けど、その言葉に安心した。ほう、と安心して一息つくと臨也さんはけらけら楽しそうに笑う。俺はそんな臨也さんを見ていつもの臨也さんだ、と心がぽかぽかするのを感じ、

「臨也さん」

と。話しかけてみれば臨也さんはにっこり笑って「なぁに」と答えてくれる。

「臨也さん、」
「うん」
「臨也さん臨也さん臨也さ、ん」
「うん」
「い、ざやさ…っ」

 何故だろうか。涙がでてきた。
 悲しいわけでも、辛いわけでもない。
 なんなんだろう。この感情は。

「正臣くん」

 笑ったままの表情で、臨也さんは話しかけてきた。なんですか、とは言えずに涙を一生懸命に拭いてこてんと首を傾げる。

「君の居場所は此処なんだよ。此処にいていいんだ、いなくちゃいけないんだ」
「いざ、や、さ…ん」

 嗚呼、これ以上俺を泣かせないでくれ。
 臨也さんの傍にいれるだけでいいんだ。居場所なんてなくったっていいんだ。―――ただ、隣にいたいだけなんだ。


2010 08 12
五ヶ月間と言う長いような短いような、そんな間こんなサイトにお付き合いいただいて本当に有難う御座いました!企画の方は、地道に消化していきます。多分もう見ていないだろうけど、精一杯書かせて頂きます。今まで本当に有難う御座いました。



 
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